「できるだけ多くの人」を設計の出発点にする

製品やサービスを「標準的な利用者」だけに合わせると、その想定から外れた人には使いにくさが生まれます。見え方や聞こえ方、手の動かし方、理解しやすい表現、使える言語、機器への慣れなどは人によって異なります。同じ人でも、けがをしているとき、暗い場所にいるとき、大きな荷物を持っているときなど、状況によって使いやすい方法は変わります。

ユニバーサルデザインでは、このような違いを例外として後回しにせず、企画や設計の初めから考えに入れます。大切なのは「すべての人が必ず同じ方法で使える」と約束することではありません。「できるだけ多くの人」が無理なく利用できる共通の土台を目指し、それだけでは足りない場合には別の手段も用意する考え方です。

たとえば、重要な状態を色だけで区別すると、色の見え方が異なる人や白黒印刷をした人には伝わらないことがあります。色に加えて文字、模様、形でも示せば、利用できる手掛かりが増えます。これは見た目を整えるだけではなく、情報の意味を確実に届ける情報デザインの判断でもあります。

一つの入口に複数の使い方を組み込む

ユニバーサルデザインは、利用者ごとに完全に別の製品を作ることとは限りません。一つのものに複数の操作方法や情報の受け取り方を組み込み、幅広い状況に対応させます。

Webサイトなら、文字を拡大しても内容が欠けない、マウスを使わずキーボードでも操作できる、画像の内容を文字でも伝える、動画の音声を字幕でも確認できる、といった工夫があります。入力欄に誤りがあるときは、色を変えるだけでなく、誤りの場所と直し方を文章で示すことも重要です。押せる場所が見た目から分かり、同じ操作が画面ごとに急に変わらないことは、ユーザーインタフェースへの迷いを減らします。

建物や日用品でも考え方は同じです。段差の少ない出入口、軽い力でも扱えるレバー、文字と図を組み合わせた案内などは、特定の一人だけでなく、さまざまな人や場面で役立ちます。ただし、工夫を一つ加えれば完成するわけではありません。実際に誰が、どこで、どのように使うのかを確かめ、試作と見直しを重ねる必要があります。

バリアフリーとアクセシビリティは同じ言葉ではない

バリアフリーは、利用を妨げる障壁を取り除くことに重点を置く言葉です。すでに段差がある場所へスロープを加える例のように、存在する障壁への改善も含みます。一方、ユニバーサルデザインは、特定の人だけを分けずに済む方法を設計の初めから検討し、幅広い人が利用できる形を目指します。両者は対立するものではなく、現実の環境ではどちらの取り組みも必要です。

アクセシビリティは、必要な情報や機能へ到達して利用できる度合いを表します。ユニバーサルデザインという方針で設計しても、実際に読み上げソフトで内容を理解できなければ、そのWebページのアクセシビリティには問題が残ります。反対に、個別の支援技術への対応によって利用できる人を増やすこともあります。ユーザビリティとアクセシビリティを確認すると、「操作しやすいこと」と「そもそも利用できること」の違いが分かります。

利用できるかは完成後ではなく途中で確かめる

設計者が多様な利用場面を想像するだけでは、見落としをなくせません。利用する人の条件を幅広く考え、目的、操作の流れ、つまずく場所を整理し、試作品の段階から確かめます。問題が見つかったら、表示、言葉、操作方法、機器の形などを見直します。

確認するときは、「説明を読めば使える」だけでなく、目的の機能を見つけられるか、誤操作から戻れるか、必要以上の力や細かな動きを求めていないか、情報を複数の方法で受け取れるか、といった点を調べます。また、通信環境や使える端末の違いによって利用者が取り残されれば、デジタルデバイドにもつながります。使う人の声を取り入れて改善を続けることが、考え方を実際の使いやすさへ変える過程です。

ピクトグラムなら必ず伝わる、とは限らない

文字を読まなくても意味をつかみやすいピクトグラムは、ユニバーサルデザインと相性のよい表現です。案内板や機器の操作表示で、短い時間に情報を伝える助けになります。小さな画面では、文章より少ない面積で機能を示せる場合もあります。

しかし、図の意味は形だけで自動的に決まるわけではありません。見慣れているか、どの文化や機器に触れてきたかによって、受け取り方が変わることがあります。似た図が別の機能を表すこともあります。そのため、重要な操作では図だけに頼らず、短い文字を添えたり、選択したときに説明を表示したりする方が確実です。ユニバーサルデザインは、特定の手法を使うことではなく、誰に情報が届き、誰が操作できない可能性があるかを繰り返し考える姿勢なのです。