量的データと質的データを区別する
最初に確認するのは、その値が何を意味するかです。量的データと質的データは、数字で書かれているかどうかだけでは区別できません。量的データは、身長、時間、得点、個数のように、大小や差を数量として扱えるデータです。足したり平均を求めたりする計算に意味があります。一方、質的データは、交通手段、選んだコース、回答の「賛成・反対」のように、種類や分類を表すデータです。
注意したいのは、分類を数字に置き換えた場合です。たとえば交通手段を徒歩=1、自転車=2、電車=3と記録しても、「電車は徒歩の3倍」という意味にはなりません。この数字は分類を識別する記号なので、平均して2.1を出しても解釈できません。各種類の件数や割合を数えるのが自然です。反対に、満足度を1から5の段階で答える形式には順序がありますが、1と2の差が4と5の差とまったく同じとは限りません。数字の見た目に引っ張られず、測定の約束まで戻って考えます。
データを扱うときは、列ごとに「変数名」「意味」「単位」「取り得る値」「欠損の表し方」を書いておくと混乱を減らせます。大量の記録をデータベースで管理する場合も、列の定義が曖昧なら、正しい集計はできません。数字の計算より先に、比べてよい値なのかを確かめることが出発点です。
平均値・中央値・最頻値を使い分ける
代表値は、多数の値を一つの数で要約する方法です。平均値は合計を個数で割った値で、すべての観測値を計算に使います。中央値は値を小さい順に並べた中央で、個数が偶数なら中央二つの平均です。最頻値は最も多く現れた値で、質的データの「最も選ばれた種類」にも使えます。ただし、最頻値が複数ある場合や、どの値も一度しか現れず最頻値を決められない場合もあります。
具体例として、10個の値を52、55、56、58、59、60、61、63、66、100とします。合計は630なので平均値は63です。中央値は5番目の59と6番目の60の間で59.5です。100を除いた9個の平均値は約58.9なので、一つの極端な値が平均値を大きく押し上げていることが分かります。一方、中央値の位置は極端な値から受ける影響が比較的小さくなります。「平均63だから多くの値が63付近」とは限りません。
平均値は全体の合計を等しく分けた水準を知りたいときに便利です。中央値は金額や待ち時間のように一部の大きな値で分布が片寄る場面で、典型的な位置を示しやすくなります。最頻値は、人気の選択肢や最もよく現れるサイズを知りたいときに役立ちます。代表値だけでなく、最小値と最大値、値の散らばり、度数分布も併記すると、「中心は同じだがばらつきが違う」集団を区別できます。
外れ値は消す前に理由を調べる
ほかの値から大きく離れた外れ値を見つけても、すぐ削除してはいけません。入力時に桁を間違えた、単位が一件だけ異なる、測定機器に不具合があったという記録上の誤りなら、元資料を確認して訂正する理由があります。しかし、実際に起きた珍しい出来事なら、それも調査対象の一部です。都合の悪い値だからという理由で除けば、結論を作り変えることになります。
点検は、まず元の記録と単位を確認し、次にその値を含む集計と除いた集計を並べます。先ほどの例なら「10件の平均63、中央値59.5」と「100を除いた9件の平均約58.9」を示し、なぜ除外案を検討したかを書きます。この感度の比較によって、結論が一件に依存しているかが見えます。値を残す場合も、平均値だけでなく中央値を添えれば、外れ値の存在を隠さずに中心を説明できます。
相関と因果を混同しない
二つの量が同じ方向、または反対方向に変化する傾向を相関といいます。散布図は、一件ごとの二つの値を点として置くため、関係の向き、直線的なまとまり、外れた点を確かめるのに適しています。しかし、点がきれいに並んでも、それだけで一方が他方の原因だとは言えません。相関関係と因果関係は別の主張です。
たとえば、ある集団で「読書時間が長い人ほど得点が高い」という関係が見つかったとします。読書が得点を上げた可能性だけでなく、もともとの学習習慣が読書時間と得点の両方に影響した可能性があります。得点が高い人ほど読書に取り組みやすいという逆向きの説明や、調べた集団だけで偶然見えた関係も検討が必要です。これは「相関は無意味」ということではありません。相関は追加調査の手掛かりですが、原因を確定するには時間の前後関係、ほかの条件、比較の設計など別の根拠が要ります。
相関を見るときは、相関係数だけで判断せず散布図も確認します。少数の外れ値が係数を動かしていないか、曲線的な関係を直線の指標で見落としていないか、複数の集団を混ぜたために見かけの傾向が生じていないかを点検します。「関係が見られた」を「原因だ」「必ず起きる」と言い換えないことが、結論の強さを保つ基本です。
グラフのウソを形から見抜く
「グラフのウソ」は、数値そのものが偽造されている場合だけを指しません。同じ正しい数値でも、描き方が差を過大または過小に感じさせることがあります。意図的とは限らず、作成者が表現の性質を理解していない場合もあります。そこで、主張より先に軸、単位、期間、図形の大きさを読みます。これは情報デザインを評価する作業でもあります。
- 軸を切った棒グラフ:92と94を比べる棒の縦軸が90から始まれば、差は2しかないのに棒の長さは大きく違って見えます。棒は長さで量を表すため、原則として0を基準にします。
- 3D円グラフ:傾いた円では手前の扇形が広く、奥が狭く見えます。割合の大小は平面で示し、各項目に数値を添えます。項目が多いときは、長さを同じ基準で比較できる棒グラフも検討します。
- 期間の切り取り:長期的には減少していても、最後の短い上昇区間だけなら「急増」に見せられます。開始点と終了点が選ばれた理由を問い、前後を含む期間を確認します。
- 絵の面積による誇張:値が2倍のときに絵の縦と横を両方2倍にすると、面積は4倍です。同じ大きさの絵を数で並べるか、長さだけを比例させます。
さらに、二つの異なる単位を左右の軸に置くグラフでは、軸の範囲を変えると線を似た形に重ねられます。線が交わること自体に意味があるとは限りません。円グラフも、割合の内訳ではない月ごとの気温などに使うと、合計する意味のない値を一つの全体のように見せてしまいます。グラフの種類は飾りではなく、どの比較を読ませるかを決める仕組みです。
標本の偏りを調査方法から見抜く
調べたい対象全体が母集団、そこから実際に調べた一部が標本です。母集団と標本の関係を無視すると、計算が正確でも一般化を誤ります。たとえば、図書館の利用に関する意見を図書館の入口だけで集めれば、普段利用しない人が入りにくくなります。任意回答のWebアンケートでは、強い関心を持つ人が回答しやすいかもしれません。回答人数が増えても、選び方が同じ方向に偏っていれば、その偏りは自動では消えません。
結果を見るときは、「誰を対象にしたか」「どこで、いつ、どの方法で集めたか」「回答しなかった人はどのくらいいるか」「質問文が特定の答えを誘導していないか」を確認します。割合には母数を添えます。80%という表示でも、5人中4人と1000人中800人では値の安定性が異なります。ただし、1000人なら必ず代表的とは限らず、選出方法の確認は残ります。
ビッグデータも同じです。記録が大量なら細かな傾向を探しやすくなりますが、そのサービスを使わない人の行動は最初から含まれないかもしれません。データ量の大きさと、母集団を偏りなく表していることは別です。欠けている集団や記録されない行動を言葉で示すと、分析結果を適用できる範囲が明確になります。
2つのツールで読み方を確かめる
可視化スタディの棒をデータとして読む
- 可視化スタディを開き、「情報」の「ソートアルゴリズム」を選びます。画面には数値を高さで示す棒が並び、各棒の上にも値が表示されます。
- 最初は配列サイズ10で試します。棒の上の値を左からメモし、合計を10で割って平均値を求めます。次にメモした値を小さい順に書き直し、中央二つの平均を中央値として予想します。
- 「バブル」を選んだまま「次へ」を繰り返すか「自動再生」を押します。比較・交換・確定の状態が色で変わり、説明と現在のStepが表示されます。最後に並んだ値の5番目と6番目を使い、予想した中央値を確認します。
- 「ランダム生成」で別の値に替え、同じ計算をします。配列サイズはスライダーで10から20まで変えられます。偶数個の中央値は中央二つの平均になるため、個数を変えたときも中央の位置を数え直します。
- 「リセット」は同じデータの手順を最初へ戻し、「ランダム生成」はデータ自体を替えます。この違いを意識し、同じデータなら並べ替えても平均値と中央値が変わらないことを確かめます。
このデモは代表値を自動計算する機能ではありません。表示された数値を小さなデータセットとして読み、自分で計算した結果を整列後の並びで検算する使い方です。棒の高さだけでなく数値ラベルを見ると、似た高さの読み違いも防げます。
グラフ批評で「元」と「直した後」を比べる
- グラフのココがおかしいを開き、最初の「購買部の新しいパン」の棒グラフを見ます。選択肢を開く前に、縦軸の下端、二本の数値、見た目から受けた印象を「気づいたこと」に書きます。
- 「メモした(次へ)」を押して問題点を選びます。解説が出たら「元のグラフ」と「直したグラフ」を切り替えます。どちらも92と94という数値は同じで、縦軸を90始まりから0始まりへ直すと印象が変わることを確認します。「グラフのデータを表で見る」を開けば元の値も照合できます。
- 「次の問題へ」で、朝読書時間と得点の問題へ進みます。棒の並びから因果を言い切れない理由を、第三の要因と逆向きの可能性の二つに分けてメモします。解説後の修正版では、数値ではなく説明の書き方が変わっている点を確認します。
- さらに次の3D円グラフでは、最も大きく見えた項目と数値上で最大の項目を先に記録します。修正版の平面円グラフへ切り替え、手前と奥による見え方の差がなくなるかを比べます。
- 続く問題では、期間の切り取り、割合の母数、二つの軸、絵の面積、グラフ種類の選択も同じ手順で点検できます。最後の結果画面には選択式の正答数、自分で気づけた数、書いたメモがまとめられ、メモをコピーできます。
操作後は、各問題について「変えてはいないデータ」「問題だった表現」「修正によって読みやすくなった点」を一文ずつ書きます。数値と表現を分けて説明できれば、グラフを疑うだけでなく、どこをどう直せばよいかまで判断できます。データを読むとは、結論を早く出すことではなく、結論を支える条件を確認することです。