「使える」と「使いやすい」は同じではない

Webサイトの文字が小さく、目的の情報が深い階層に隠れているとします。文字を読める人でも、情報を探すのに時間がかかれば、ユーザビリティが高いとはいえません。一方、文字を拡大すると一部が画面外へ消える、読み上げソフトではボタンの意味が分からない、といった状態では、利用者によっては操作そのものが困難です。こちらはアクセシビリティの問題です。

ユーザビリティは、特定の利用者が特定の目的を達成するときの、分かりやすさ、効率、間違えにくさなどに注目します。アクセシビリティは、障害の有無、年齢、使用する機器、周囲の環境などが異なっても、情報や機能へ到達して利用できるかに注目します。両者は重なる部分がありますが、どちらか一方だけで置き換えられるものではありません。

たとえば、すべての機能をキーボードで操作できても、メニューの名前や並び順が分かりにくければ、アクセスはできても使いにくい状態です。逆に、見た目が整理され、マウスでは快適に操作できても、キーボードで選べない項目があれば、使いやすさを感じる前に利用を妨げられる人がいます。

アクセシビリティは情報への入口をふさがない

Webページでは、見た目だけでなく、内容の構造を機械が読み取れるように作ることが重要です。見出しを見出しとして指定し、入力欄には何を入力する場所かを示し、画像で伝える内容には必要に応じて代替テキストを用意します。こうすると、画面の文字を音声で伝えるスクリーンリーダーなどでも、情報の順序や部品の意味を判断しやすくなります。

色だけで正解と不正解を区別すると、色の違いを見分けにくい人には伝わらない可能性があります。「正解」という文字や記号も併用すれば、複数の手がかりで理解できます。動画に字幕があれば、音声を聞き取りにくい場合でも内容を追えます。マウスを使わずに、キーボードだけでリンクやボタンへ移動し、実行できることも重要です。

ここで必要なのは、ある一人に合わせた特別な入口を後から足すことだけではありません。最初から多様な利用方法を想定するユニバーサルデザインと共通する考え方があります。ただし、ユニバーサルデザインが製品や空間なども含む広い設計思想であるのに対し、アクセシビリティは情報や機能を利用できる状態かどうかを具体的に確かめる場面でも使われます。

ユーザビリティは目的達成までの負担を見る

使いやすさは、画面が美しいかだけでは決まりません。利用者が目的を理解し、必要な操作を選び、結果を確かめるまでの流れ全体が対象です。押せるように見えるボタン、現在地が分かるメニュー、入力ミスの場所と直し方が分かる表示は、迷いややり直しを減らします。操作に対して反応が返ることも大切です。保存できたのか分からない画面では、同じ操作を繰り返す原因になります。

画面上の形や色が操作方法を伝える手がかりは、シグニファイアという考え方で整理できます。また、文字、余白、情報の順序を整えて意味を伝えることは情報デザインの役割です。その設計が実際の操作として現れる場所がユーザーインタフェースです。これらを組み合わせても、利用者の目的や状況に合わなければ、十分なユーザビリティにはなりません。

利用者が迷った場所、誤操作した場面、完了までに必要だった手順などを観察すると、設計者の予想だけでは見えなかった問題が分かります。機能を追加することが改善になるとは限りません。選択肢が増えすぎて目的の操作を見つけにくくなる場合には、整理や削減の方が有効です。

同じ画面を二つの視点で点検する

予約フォームを例にすると、アクセシビリティの点検では、キーボードだけで入力と送信ができるか、入力欄の名前を読み上げられるか、エラーが色だけで示されていないかを確かめます。ユーザビリティの点検では、必要な情報量が適切か、日付の選び方が分かるか、送信前に内容を確認できるか、修正方法が明確かを確かめます。

改善が別の問題を生むことにも注意が必要です。説明を増やしすぎると重要な操作が見つけにくくなり、文字を大きくしても狭い画面で重なれば読めません。そこで、文字の拡大、キーボード操作、音声読み上げ、小さな画面など、異なる条件で確かめます。分かりやすいピクトグラムも、意味が一通りに伝わるとは限らないため、必要なら文字を添えます。

アクセシビリティを満たしたかという確認と、実際に迷わず目的を達成できるかという確認を分けると、問題の性質が見えやすくなります。そのうえで両方を行き来して改善することが、幅広い人にとって利用しやすい設計につながります。

字幕とキーボード操作が活躍する意外な場面

アクセシビリティのための工夫は、特定の人だけに役立つとは限りません。字幕は、音を出せない場所や周囲が騒がしい場所でも動画の内容を確かめる助けになります。キーボード操作は、マウスを使えない場合だけでなく、文字入力を続けながら素早く操作したい場合にも便利です。十分な文字と背景の差は、画面に光が映り込む場所での読みやすさにも関係します。

利用しにくさは、人の性質だけで決まるのではなく、設計と利用状況の組み合わせで生じます。普段は問題なく音声を聞ける人でも、端末を消音にすれば字幕が必要になります。片手に荷物を持っていれば、複雑な操作は難しくなります。このように利用場面まで広げて考えると、アクセシビリティの改善が多くの人のユーザビリティも高める理由が見えてきます。