数字で記録されていても「量」とは限らない

会員番号、郵便番号、背番号は数字で書かれています。しかし、会員番号100の人が会員番号50の人の2倍である、とは考えません。これらの数字は対象を区別するラベルであり、足し算や平均には意味がないからです。一方、所要時間や商品の重さは、差や比を調べることで量の違いを表せます。

質的か量的かは、表計算ソフトで「数値」として保存されているかどうかでは決まりません。その値が分類を表すのか、測定や個数を表すのかという役割で決まります。「晴れ・曇り・雨」のような文字でも、「1・2・3」と置き換えれば保存できますが、番号を割り当てただけで天気が量的データに変わるわけではありません。データベースの列を設計するときも、データ型と分析上の性質は分けて考える必要があります。

四つの尺度が「できる計算」を決める

質的データと量的データは、さらに「どのような比較が意味を持つか」によって四つの尺度水準に整理できます。

  • 名義尺度は、種類が同じか違うかだけを区別します。都道府県名、商品カテゴリ、端末の種類などが例です。並べる順番に意味はありません。
  • 順序尺度は、分類に順序があります。「満足・普通・不満」や順位などが例です。ただし、隣り合う段階の間隔が同じとは限りません。
  • 間隔尺度は、値の差に意味があります。摂氏温度では、10度から20度までの差と20度から30度までの差は同じ10度です。一方、0度は温度が存在しないことを示さないため、20度を10度の2倍の温かさとは扱えません。
  • 比例尺度は、差に加えて比にも意味があります。長さ、質量、経過時間などが例で、0は測っている量がない状態を表します。そのため、20cmは10cmの2倍という比較ができます。

名義尺度と順序尺度は主に質的データ、間隔尺度と比例尺度は量的データとして扱われます。この区別は用語を暗記するためではなく、計算結果を正しく解釈するための判断基準です。

分類は件数、量は分布から読み取る

質的データでは、各分類の件数や割合を集計すると特徴が見えます。最も件数の多い分類を表す最頻値、棒グラフ、二つの分類を組み合わせたクロス集計などが適しています。順序尺度なら中央値を使って中心的な段階を示せる場合もありますが、段階同士の間隔を勝手に同じだとみなす計算には注意が必要です。

量的データでは、合計だけでなく、値がどこに集まり、どの程度散らばっているかを調べます。代表値で中心を捉え、ヒストグラムや箱ひげ図で分布を確認すると、同じ平均値を持つデータ同士にも違いがあることが分かります。平均値は極端に大きい値や小さい値の影響を受けるため、外れ値と欠損値の確認も欠かせません。

量的データには、人数や個数のように飛び飛びの値を取る離散データと、時間や長さのように一定の範囲で連続的な値を取り得る連続データがあります。測定機器が有限の桁で記録する場合でも、測ろうとしている量の性質に基づいて考えます。

集める前の選択肢が分析の限界になる

アンケートで利用頻度を尋ねるとき、「よく使う・ときどき使う・使わない」と尋ねれば順序のある質的データになります。「1週間に何回使うか」と尋ねれば量的データになります。同じ対象を調べても、質問と回答形式によって得られるデータの性質は変わります。

量的データを「10未満・10以上20未満・20以上」のような階級にまとめると、質的な区分として扱えます。全体の傾向は見やすくなる一方、区分内の細かな差は失われ、境界の決め方で見え方も変わります。反対に、「大・中・小」に1・2・3を割り当てても、失われていた実測値が生まれるわけではありません。必要な分析を先に考え、測定単位、分類の選択肢、未回答の記録方法を決めることが重要です。

集めたデータが対象全体の特徴を表しているかは、質的・量的の区別とは別の問題です。一部を調べて全体を推測する場合は、母集団と標本の関係も確認します。また、二つの量的データが一緒に増減していても、それだけで原因と結果は決まりません。相関関係と因果関係を区別して解釈する必要があります。

電話番号の平均が教える意外な落とし穴

計算ソフトは、入力された数字が番号なのか測定値なのかを自動では判断できません。電話番号や商品コードを数値として読み込めば、平均値を計算できてしまいます。しかし、計算を実行できることと、その結果に意味があることは別です。先頭の0が消えることもあるため、番号は文字列として保存する方が目的に合います。

反対に、0と1で記録した二択のデータでは、1の割合を求める目的で平均を利用できる場合があります。これは番号の大小を比べているのではなく、1を付けた分類の件数を全件数で割る計算になっているからです。同じ数字でも、何を表すように定義したかによって有効な処理が変わるという、質的データらしい例です。分析の最初に「この値にはどんな比較が許されるか」を確かめる習慣が、意味のない計算を防ぎます。