三つの代表値が答える三つの質問
平均値、中央値、最頻値は、どれもデータを一つの値にまとめますが、同じ「中心」を探しているわけではありません。
平均値が答えるのは、「合計を全員に同じ量ずつ配り直すと、いくつになるか」という質問です。すべての値を足し、データの個数で割って求めます。各データが変化すれば合計も変わるため、原則としてすべての値が計算結果に関わります。
中央値が答えるのは、「小さい順に並んだ列の中央はどこか」という質問です。個数が奇数なら中央の値、偶数なら中央に並ぶ二つの値の平均を取ります。大切なのは値の順番なので、端にある値がさらに大きくなっても、中央の並びが変わらなければ中央値は変わりません。
最頻値が答えるのは、「最も多く現れた値や種類は何か」という質問です。合計や大小ではなく出現回数を見ます。この違いを理解すると、三つのうちどれを示すべきかを目的から選べます。
七つの数値で平均値・中央値・最頻値を比べる
「2、3、3、4、5、6、19」という七つのデータを考えます。合計は42なので、平均値は 42 ÷ 7 = 6 です。小さい順に並べたときの4番目は4なので、中央値は4です。3が2回で最も多く現れるため、最頻値は3です。一つのデータから、6、4、3という異なる答えが得られます。
平均値の6は計算間違いではありません。しかし、七つのうち六つが6以下で、19だけがほかの値から離れています。この19のように、データ全体の傾向から大きく離れた値を外れ値と呼びます。平均値は19を含む合計を均等に配った値なので、大きい側へ動きます。一方、19をさらに大きな値に変えても、並びの中央が4である限り、中央値は4のままです。
この例から「中央値は常に正しく、平均値は危険」と結論づけることはできません。平均値には全データの値が反映されるため、合計を基準に比較したい場面では有用です。中央値は順位の中央を知りたい場面に向きます。どの質問に答えたいかが、選択の基準です。
数字でない回答にも最頻値なら使える
代表値を選ぶ前に、データの種類を確かめる必要があります。身長や時間のような量的データと、色や種類のような質的データでは、できる計算が異なります。
例えば、選ばれた色が「青、赤、青、緑、青」なら、最頻値は青です。色には足し算や割り算の意味がないため、平均値は求められません。また、決められた順序もないので中央値も求められません。それでも、出現回数なら数えられます。このように最頻値は、数値ではない分類にも使える代表値です。
数値に見えても、単なる識別番号である場合には注意が必要です。背番号や商品番号を足して割っても、その平均が対象の中心的な性質を表すとは限りません。表計算ソフトが計算できることと、その計算に意味があることは別です。
最頻値は一つとは限らない
最頻値には、平均値や中央値とは違う少し意外な性質があります。「1、1、2、2、3」では、1と2がともに2回現れるため、最頻値は二つあります。「1、2、3」のように、すべての値の出現回数が同じなら、特定の一つを「最も多い」とは決められません。最頻値を必ず一つだけ答えるものだと考えると、データの特徴を取りこぼします。
連続的に変わる身長などを一定の幅に区切り、「160 cm以上165 cm未満」のような階級で集計する場合は、最も度数の多い階級を最頻階級と呼びます。ただし、区切り方を変えると各階級の度数も変わり、最頻階級が変わることがあります。最頻値を見るときには、元の値を数えたのか、区切った範囲を数えたのかも確認が必要です。
欠けた値をゼロとして平均しない
未回答や測定不能を表す欠損値は、数値の0とは意味が異なります。欠損値を機械的に0へ置き換えて平均すると、実際には観測されていない0が計算へ入り、平均値を変えてしまいます。反対に欠損のある行をすべて除けば、残ったデータに偏りが生じる場合があります。代表値を読むときは、欠損値をどう扱ったか、計算に使ったデータはいくつかも確かめます。
標本から代表値を計算した場合、その値は調べた標本の要約です。母集団と標本の選び方に偏りがあれば、計算自体が正しくても母集団の特徴を適切に表さないことがあります。代表値の桁数だけを細かく示しても、元データの集め方による問題は解消されません。
代表値が同じでも分布の形は同じとは限らない
「1、3、5」と「3、3、3」は、どちらも平均値と中央値が3です。しかし、前者には値の広がりがあり、後者にはありません。代表値はデータを一つに圧縮するため、散らばり方や山の数、左右の偏りといった情報は残りません。
したがって、代表値だけを見てデータ全体が同じだと判断するのは危険です。可能なら、最小値と最大値、値の散らばりを示す指標、度数分布表やグラフも併せて確認します。さらに、平均値・中央値・最頻値のどれを示したのか、対象とした期間や範囲、データ数、欠損値の扱いが明記されているかを確かめると、要約された一つの数字を過大評価せずに読めます。