相関が示すのは「一緒に変わる傾向」まで

相関関係を調べるときは、同じ対象について測った2つの量を組にします。たとえば、複数の日について気温と飲料の販売数を記録すれば、1日ごとに「気温、販売数」という組ができます。その組を点として置いた散布図が右上がりなら、一方が大きいときに他方も大きい「正の相関」が疑われます。右下がりなら、一方が大きいほど他方が小さい「負の相関」です。点が一定の方向に並ばなければ、少なくとも図からは明確な相関を読み取りにくい状態です。

直線的な関係の向きと強さを表す代表的な指標に、相関係数があります。よく使われるピアソンの相関係数は -1 以上 1 以下で、1に近いほど強い正の相関、-1に近いほど強い負の相関を示します。0に近いのは「直線的な関係が弱い」という意味です。曲線状のはっきりした関係があっても、値が0に近くなる場合があるため、「何の関係もない」とは言い切れません。数値だけでなく散布図も確かめることが大切です。

原因と結果には相関より多くの根拠がいる

因果関係は、ある要因を変化させたことによって、結果が変化する関係です。相関は観測したデータの並び方から計算できますが、それだけでは原因から結果へ向かう矢印の有無や向きを確定できません。

AとBに相関が見つかったとき、少なくとも次の可能性を区別する必要があります。

  • AがBに影響している
  • BがAに影響している
  • 別の要因CがAとBの両方に影響している
  • 対象の選び方や測り方によって、関係があるように見えている
  • 偶然、そのデータでは同じ動きをしている

3つ目のCのように、比較したい要因と結果の両方に関係し、判断を紛らわせる変数を交絡因子といいます。気温が高い日に冷たい飲料の販売数と冷房の電力使用量がともに増えていても、飲料の購入が電力使用量を増やしたとは限りません。気温という第三の要因で説明できる可能性があるからです。

逆向き・第三の変数・偶然を順に疑う

データを読むときは、最初に原因の向きを点検します。「検索回数が増えたので話題になった」のか、「話題になったので検索回数が増えた」のかは、同じ相関からは決められません。次に、年代、季節、地域、生活環境など、両方の値を動かしそうな第三の変数を探します。そして、対象数や集め方に偏りがないか、測定条件がそろっているかも確認します。母集団と標本の関係がずれていると、調べた範囲だけの傾向を全体の性質だと誤解しかねません。

一部の極端な値だけで相関係数が大きく変わることもあります。ただし、極端だからという理由だけで値を削除してはいけません。入力ミスなのか、測定上あり得る値なのかを確かめる必要があります。外れ値と欠損値をどう扱ったかは、分析結果と一緒に記録しておくと検証しやすくなります。

さらに、多数の組合せを次々に調べれば、実際には安定した関係がなくても、偶然に強そうな相関が現れることがあります。都合のよい組だけを示すのではなく、何を目的に、どのデータを、どの条件で比べたのかを明らかにする必要があります。

因果の矢印を確かめる比較の組み立て

因果関係を検討する有力な方法は、結果に影響しそうな条件をできるだけそろえ、注目する要因だけが異なる集団を比較することです。対象を無作為にグループへ割り当てる実験では、実施前からある性質が一方のグループだけに偏る危険を小さくできます。同じ結果が繰り返し得られるか、原因と考える変化が結果より先に起きているか、説明に無理がないかも重要です。

一方、人の生活や社会を扱う調査では、実験が倫理的または実務的にできない場合があります。そのときは観察データを用い、交絡しそうな変数を測って条件をそろえたり、回帰分析でそれらの影響を考慮したりします。ただし、測っていない交絡因子まで自動的に消えるわけではありません。分析手法が高度でも、データの集め方と前提の説明は欠かせません。

「傘の数」と「ぬれた地面」に隠れた共通原因

雨の日には、街で見かける傘の数が増え、ぬれた地面の面積も増えます。この2つは同時に変わりますが、傘が地面をぬらす原因だと考えるのは不自然です。共通原因である雨を加えると、「雨が傘の使用を増やす」「雨が地面をぬらす」という2本の因果の矢印として整理できます。身近な相関にも、観測した2項目だけでは見えない変数が隠れています。

このような構造を図にすると、相関を見つける作業と因果を説明する作業の違いが明確になります。オープンデータを組み合わせれば意外な相関を探せますが、収集時期、地域、単位、定義が一致しているとは限りません。面白い一致を発見した時点は結論ではなく、「なぜ一緒に動くのか」という仮説を立て、追加のデータや適切な比較で確かめる出発点です。