針の位置と数字の表示は何が違うのか
針式時計では、針の角度が時刻に対応します。二つの目盛りの間にも位置があり、針の動きを連続した変化として読み取れます。数字で時刻を示す時計では、「10時24分」の次に「10時25分」と表示するように、決められた単位ごとの値を示します。同じ時刻を伝える道具でも、情報を何に対応させて表すかが異なります。
温度計も同様です。液体の高さや針の位置で温度を示せばアナログ表示、測った結果を「23.4 ℃」のような数値で示せばデジタル表示です。ただし、画面に数字が出るという外見だけで、機器全体の仕組みが説明できるわけではありません。デジタル温度計も、初めは温度という物理量をセンサーで電気信号に変え、その信号を数値へ変換しています。
アナログとデジタルは、ものを二種類に分類する言葉というより、情報の表現方法を比べるための言葉です。一つの機器の中に、アナログ信号を扱う部分とデジタルデータを扱う部分が共存することも珍しくありません。
音の波を数値の並びに変える三段階
マイクに音が入ると、空気の振動に応じて電気信号が変化します。この連続的な信号をコンピュータで扱うには、まず一定の時間間隔で信号の大きさを測ります。これが「標本化」です。次に、それぞれの測定値を、あらかじめ用意した段階のどれかに対応させる「量子化」を行います。最後に、対応させた値をビット列として表す「符号化」を行います。この流れは標本化・量子化・符号化として整理できます。
測る時間間隔が粗ければ、短い時間に起きた変化を十分に捉えられません。量子化の段階が少なければ、本来は少しずつ異なる値を同じ値として記録することが増えます。細かく記録すれば元の変化をより詳しく表せますが、必要なデータ量も増えます。どの程度の細かさが必要かは、音声、画像、計測データなど、目的によって異なります。
符号化された値は、多くのコンピュータでは0と1の組合せで扱われます。二進法は、そのビット列を数として読むための基本です。ただし「デジタルなら必ず二進法」という意味ではありません。デジタルの本質は値が離散的、つまり区切られていることであり、二進表現はその代表的な実現方法です。
同じビット列を取り戻せる強み
アナログ信号を記録したり伝送したりすると、途中で雑音が加わったり、媒体の性質が変化したりします。複製すると、その影響も含めて次の記録へ渡ることがあります。これに対してデジタル信号は、受け取った状態がどの記号を表すかを区別できる範囲なら、元の0と1の並びを判定して作り直せます。そのため、同一のデータを保存・複製・伝送しやすく、検索や編集、自動処理にも利用しやすいという利点があります。
ただし、デジタルデータなら何をしても劣化しないわけではありません。記録媒体の故障や通信エラーによってビットが失われれば、内容は壊れます。また、画像や音声のデータ量を減らすために情報の一部を捨てる非可逆圧縮を行えば、展開しても捨てた情報は戻りません。「複製しても同じビット列を保てること」と、「現実の様子を完全に記録できること」は別の話です。
カメラとスピーカーでは両者が往復する
デジタルカメラでは、レンズを通った光を撮像素子が受け、光の強さなどに応じた信号を数値へ変換します。画像は画素ごとの値として保存され、コンピュータで色の調整や切り抜きができます。画素を格子状に並べて表す考え方はラスタ形式の基本です。一方、画面に表示するときは、数値に従って各画素を発光させ、人の目に届く光へ戻します。
録音と再生にも同じ往復があります。録音時には音の振動を電気信号にし、それを数値化して保存します。再生時には数値の列から電気信号を作り、スピーカーで空気の振動へ変えます。キーボードやセンサーから情報を受け取り、ディスプレイやスピーカーを通じて人へ返す関係は、入力装置と出力装置にもつながります。デジタル機器が広く使われても、人と機器が接する入口と出口には、光、音、圧力などの物理的な変化があります。
「アナログは曖昧、デジタルは正確」とは限らない
表示される桁が多い測定器を見ると、デジタルのほうが常に正確に思えるかもしれません。しかし、表示の細かさと測定の正しさは同じではありません。センサーの性能、測定範囲、周囲の環境、数値へ変換する際の段階などによって、得られる値には限界があります。小数点以下まで表示されていても、そのすべての桁が現実の量を正しく表しているとは限りません。
反対に、アナログ表示には連続した変化の傾向を目で追いやすい場合があります。針が少しずつ上昇しているのか、急に振れているのかは、個々の数値を読む前にも把握できます。デジタル表示は値を正確に読み取りやすく、記録や計算に渡しやすいという特徴があります。どちらが一律に優れているのではなく、変化の様子をつかみたいのか、決まった値として保存・処理したいのかによって、適した表し方が変わります。