一つの通信はLANからWANへ渡っていく

家庭の端末から離れた場所にあるWebサーバへアクセスするとき、通信は最初から最後まで一種類のネットワークだけを通るわけではありません。端末はまず、無線LANのアクセスポイントやLANケーブルを通じて家庭内のネットワークに参加します。ここまでが身近なLANです。宛先がLANの外にある場合、データは出口となるルーターへ送られ、通信事業者の回線へ渡されます。その先では複数のネットワークを経由し、目的のサーバが接続されているLANへ届きます。

このように、LANとWANは対立する二者ではなく、役割を分担して一続きの通信を支えています。LANは端末やプリンタなど近くの機器を結び、WANは地理的に離れたLANや拠点を結びます。Webページの表示、クラウドへの保存、動画の視聴なども、この組み合わせの上で成り立っています。

LANは「狭い」、WANは「遠い」だけでは決まらない

LANはLocal Area Networkの略で、家庭、建物、施設など、限られた範囲の機器を接続します。多くの場合、利用する個人や組織がスイッチ、アクセスポイント、ケーブルなどを用意し、接続する機器や設定を管理します。有線LANではイーサネット、無線LANではWi-Fiが広く使われています。

WANはWide Area Networkの略です。離れた場所にあるネットワーク同士を結ぶため、自分の敷地だけでは用意できない通信経路を必要とすることが多く、通信事業者が提供する回線やサービスが利用されます。例えば、離れた複数の事業所のLANを専用の通信サービスで結べば、組織用のWANを構成できます。

ただし、LANとWANを分ける世界共通の距離の境界線があるわけではありません。何メートルまでがLAN、と数値だけで判定するのではなく、限られた範囲を一まとまりとして管理するネットワークか、離れたネットワーク間を結ぶものかを見ることが大切です。

Webサイトまでの道筋を機器ごとに追う

ブラウザにサイト名を入力すると、まずドメイン名とDNSの仕組みによって、通信相手を示すIPアドレスが調べられます。端末は、その宛先が同じLAN内にあるか外にあるかを判断します。外にある場合は、あらかじめ設定された出口のルーターへデータを送ります。

送るデータは、通信しやすい大きさのパケットに分けられます。ルーターはパケットの宛先を確認し、次に渡すべき経路へ転送します。通信事業者側にも多数のルーターがあり、転送を繰り返して宛先へ近づけます。LANで使うイーサネットやWi-Fiと、WAN側で使われる通信方式が同じでなくても、共通のプロトコルに従い、各区間に合った形式で運ぶことで通信を継続できます。

LAN内で完結する通信なら、原則としてWANへ出る必要はありません。例えば、同じLANにある端末から共有プリンタへ印刷データを送る場合です。一方、外部のクラウドへ保存する場合はWANを通ります。利用者から同じように見える操作でも、宛先によって経路は変わります。

Wi-FiとインターネットはLAN・WANの別名ではない

Wi-Fiは無線でLANへ接続するための技術であり、インターネットそのものではありません。端末にWi-Fiの接続表示が出ていても、アクセスポイントから先のWAN回線に障害があれば、家庭内の機器とは通信できてもインターネット上のサービスには到達できません。逆に、Wi-Fiを使わず有線LANでルーターにつないでも、WAN回線が利用できればインターネットへ接続できます。

インターネットとWANも完全な同義語ではありません。WANは広い範囲を結ぶネットワークの分類で、特定の組織の拠点だけを結ぶものも含みます。インターネットは、管理者の異なる多数のネットワークが相互に接続された「ネットワークのネットワーク」です。したがって、社内WANにはつながるが一般のインターネットには出られない、という構成も可能です。

家庭用ルーターの「LAN側」と「WAN側」

家庭用ルーターの背面を見ると、複数の「LAN」端子と、一つの「WAN」端子が分けて表示されていることがあります。これは単なる端子名ではなく、その機器が二つのネットワークの境界に立っていることを示します。LAN端子は端末やスイッチなど家庭内の機器側へ、WAN端子は回線終端装置など外部回線側へ接続します。

さらに、一般的な無線LANルーターは、経路を選ぶルーター、複数の有線機器を結ぶスイッチ、無線端末を収容するアクセスポイントなどの機能を一台にまとめています。そのため日常では一つの「ルーター」に見えても、ネットワーク上の役割は一つとは限りません。端子と機能を分けて考えると、障害がLAN内にあるのか、WANへの出口より先にあるのかを切り分けやすくなります。