本文へ移動
試験

  1. 高校情報
  2. 読んで分かる ITパスポート・基本情報
  3. プロジェクトマネジメント
  4. 第2章 スコープ・資源・時間

プロジェクトマネジメント 第2章 マネジメント系・大分類:プロジェクトマネジメント

スコープ・資源・時間

作業の範囲を決めて細かく分解し、必要な人と物を割り当て、日程を見積もって組み、遅れを取り戻す方法。

2-1スコープの定義

日曜の閉店後、こむぎ堂の作業台はふせんで埋まっていました。2号店の開店までにやることを、ミナトが思いつくまま書き出したものです。「看板」「レジ」「オーブン」「チラシ」「制服」。店長が一枚ずつ読み上げていき、最後に首をかしげました。「保健所の営業許可は? あれが下りないと、パンを一個も売れないよ」。ミナトは慌てて新しいふせんに書き足します。足してみると、別の心配も出てきました。オーブンは内装工事が終わらないと据え付けられず、内装が1週間遅れれば開店日には間に合いません。新しいアルバイトの研修も、試し焼きと同じ週に重なりそうです。ミナトは相棒に打ち込みました。「抜けを無くして、順番も決めて、開店日に間に合うか確かめる方法ってある?」

パン屋の作業台いっぱいにふせんが貼られ、アルバイトの高校生が「営業許可」と書いたふせんを慌てて足している。横で店長がふせんを指さしている
図:思いつくまま書き出したふせん。「営業許可」が抜けていた

相棒の返事は、ふせんを増やす前に一つ決めることがある、というものでした。この仕事で何を作り、何をするのか。その範囲を先に決めないと、抜けているのか、そもそも要らないのかを判断できません。プロジェクトで作る成果物と、それを作るための作業の範囲をスコープといいます。2号店なら、成果物は「営業許可を受けて、パンを焼いて売れる店舗」で、作業はその店舗を用意するための工事や手続き、採用です。

スコープを決めるときは、含めるものと同じくらい、含めないものをはっきりさせます。駅前の店舗の前にある駐輪場を整えるのは、大家さんの仕事で、こむぎ堂のプロジェクトには入りません。2号店で売るパンの新しいレシピづくりも、今回は入れないことにしました。このように、作業の範囲と成果物を具体的に決めていく活動をスコープ定義といいます。

決めた中身は、文書に書き残します。成果物、作業の範囲、含めないもの、出来上がったと認める条件(受け入れの基準)、守らなければならない制約などを記した文書がプロジェクトスコープ記述書です。同じ文書をプロジェクト作業範囲記述書と呼ぶこともあります。こむぎ堂の記述書には「受け入れの基準:保健所の営業許可が下り、オーブンで食パンを一度に20斤焼けること」と書かれました。

ここから基本情報!スコープの文書の呼び名

基本情報のシラバスは、JIS Q 21500(プロジェクトマネジメントの手引)の言葉づかいに合わせて、この文書をスコープ規定書と呼びます。中身はプロジェクトスコープ記述書と同じで、作業範囲・成果物・除外事項・制約などを定めた文書です。

スコープ規定書は、一度に完成させるとは限りません。プロジェクトマネジメントの知識体系であるPMBOKの以前の版(第3版)には、プロジェクト憲章をもとに、まだ確定していない段階のスコープを暫定的に書き出すプロセスがあり、プロジェクト・スコープ記述書暫定版作成と呼ばれていました。いまの版にはこの名前のプロセスはありません。

基本情報の範囲ここまで

範囲を書き残すのは、後から少しずつ広がっていくのを防ぐためでもあります。打合せのたびに「ついでに看板に照明も」「ついでにレジ横に棚も」と頼んでいくと、一つ一つは小さくても、工事は確実に長くなり、お金も増えていきます。

ここから基本情報!知らないうちに広がる範囲

期間・予算・人の見直しをしないまま、正式な手続きも通さずに、作業の範囲が少しずつ広がっていくことをプロジェクトスコープのクリープ(スコープクリープ)といいます。クリープは「じわじわ進む」という意味です。照明を足すこと自体が悪いのではありません。足すなら変更要求として出し、期間と費用への影響を確かめてから決める、という手順を飛ばすことが問題です。

基本情報の範囲ここまで

2-2WBSとワークパッケージ

範囲は決まりました。それでも、ふせんの山は減りません。「看板」と「チラシ」は同じ種類の仕事なのに離れた場所に貼られ、「内装工事」は一枚だけなのに、どう見ても一番大きな仕事です。ミナトはふせんをいったん全部はがしました。

思いつく順に並べた作業の一覧は、抜けに気づきにくく、大きさもばらばらになります。そこで、成果物を頂点に置き、それを作るのに要る部分へ、さらにその部分を作る作業へと、上から順に分けていきます。こうして作業の全体を階層の形に整理した図をWBS(Work Breakdown Structure、作業分解構成図)といいます。

こむぎ堂のWBSの頂点は「2号店の開店」です。その下に「店舗の工事」「許可と届出」「人の準備」「販売の準備」の四つを置き、「店舗の工事」をさらに「内装工事」と「厨房機器の据え付け」に、「内装工事」を「解体」「配管」「床」「壁」「照明」「仕上げ」に分けました。上から分けていくと、「許可と届出」の箱の中が空のままでは済まないので、営業許可のような抜けに気づけます。

大きな作業を、より小さな作業の単位へ階層的に分けていく手順を要素分解といいます。どこまで分けるかの目安は、担当する人を一人(または一社)に決められ、かかる日数と費用を見積もれる大きさになるまでです。「内装工事」のままでは何日かかるか答えにくくても、「床を張る」なら業者は日数を答えられます。

「2号店の開店」を頂点に、店舗の工事・許可と届出・人の準備・販売の準備の四つに分かれ、内装工事がさらに解体・配管・床・壁・照明・仕上げに分かれた木の形の図
図:2号店の開店のWBS。いちばん下の箱ごとに日数と費用を見積もる

ここから基本情報!いちばん下の箱と、その説明書

WBSの最下層にある、期間と費用を見積もって管理できる作業のまとまりをワークパッケージといいます。こむぎ堂のWBSなら「床」「壁」「営業許可の申請」などがワークパッケージです。日程も費用も担当も、ワークパッケージを単位にして決めていきます。

WBSの図には、箱の名前しか書けません。「床」の箱が、どの部屋のどの床材までを含むのかは、図を見ても分かりません。そこで、WBSの要素ごとに、作業の内容、担当、必要な資源、完了の基準などを書き出した文書を作ります。これがWBS辞書です。「床:厨房とお客さんの通る売り場、計60㎡。床材は滑りにくいもの。担当は内装業者。完了の基準は、店長が歩いて確かめること」のように書きます。

基本情報の範囲ここまで

2-3資源の見積りと組織

WBSを壁に貼った翌日、内装業者から電話がありました。「壁の工事の日、厨房のどこまで触っていいか、どなたに確認すればいいですか」。店長は「ミナトに聞いて」と言い、ミナトは「店長に聞いてください」と答えるところでした。

作業が分かれたら、次はそれを誰が、何を使ってやるのかを決めます。プロジェクトで使うもののうち、店長やミナト、内装業者の職人、新しく雇うアルバイトのような「人」を人的資源といいます。2号店では、パンを焼ける人が店長と1号店の職人の二人しかいないことが、すでに一番の制約になっています。

人を決めるとき、電話のような行き違いを防ぐのが表です。縦に作業、横に人や組織を並べ、交わるマスに「実施する」「責任を持つ」「相談を受ける」などの役割を書き込んだ表をRAM(Responsibility Assignment Matrix、責任分担マトリックス)といいます。主記憶のRAM(Random Access Memory)とは、同じ3文字の別の語です。

2号店の責任分担マトリックス(一部)
作業店長ミナト内装業者
内装工事承認相談を受ける実施・責任
営業許可の申請責任実施―
アルバイトの研修実施・責任協力―

表ができると、内装業者の電話の行き先も決まります。内装工事の中身は業者が責任を持ち、厨房をどこまで触るかのような判断は店長が承認します。ミナトは相談を受けて、話を店長につなぐ係です。

ここから基本情報!人以外の資源と、見積りの文書

資源は人だけではありません。施設や機器、材料のように、人以外のものを物的資源といい、使われ方でさらに分けられます。オーブンやレジ、店のパソコンのように業務で使う装置は機器、パンを並べるトレーやトングのように、長い期間くり返し使う比較的小さな物は備品です。床材や配管の部品、試し焼きに使う小麦粉のように、作業の中で使われて形を変えたりなくなったりする材料や部品は資材と呼びます。

ワークパッケージごとに、どの種類の資源がどれだけ要るかを示したものが資源要求事項です。「試し焼き:店長と職人の2人で4日、オーブン1台、小麦粉50kg」のように書きます。この数字を出す作業を、JIS Q 21500 では「資源の見積り」と呼び、PMBOKの版によってはアクティビティ資源見積りと呼んでいました。アクティビティは、ワークパッケージをさらに分けた一つ一つの作業のことです。

人については、どの役割に誰を置き、誰が誰に報告するのかも決めます。PMBOKの以前の版では、必要な役割・責任・報告の関係を決めて人の配置を計画するプロセスを人的資源計画と呼んでいました(基本情報のシラバスでは「プロジェクト組織の定義」がこれに近いプロセスです)。決めた体制は、チームの構成員と指示・報告の関係を図にしたプロジェクトの組織図にまとめます。

組織図は人のつながりを、WBSは作業のつながりを表します。その二つを結ぶのが、プロジェクトに関わる組織を階層に並べ、どの組織がどの作業を受け持つかを対応させたOBS(Organizational Breakdown Structure、組織ブレークダウンストラクチャ)です。こむぎ堂なら「こむぎ堂(店長・職人・ミナト)」「内装業者」「厨房機器の販売店」が並び、それぞれの下に受け持つワークパッケージがぶら下がります。

基本情報の範囲ここまで

2-4チームのマネジメント

新しいアルバイトが3人決まりました。研修の初日、1号店から2号店へ移る職人が「成形は毎回こうやって」と手本を見せると、前のパン屋で働いていた一人が「前の店では、こっちのほうが速かったです」と言い返します。その日の夕方、職人は店長に「あの子に教えるのは無理です」とこぼしていました。

人を集めれば、それでチームになるわけではありません。プロジェクトでは、立場や経験の違う人が短い期間で一緒に働くので、意見や利害の食い違いが起きやすくなります。関係者の間で、意見や利害がぶつかって起きる衝突をコンフリクト(対立)といいます。成形のやり方をめぐる職人と新人の言い合いは、まさにコンフリクトです。

コンフリクトは、押さえ込むだけでは消えません。店長は二人を呼んで、両方のやり方で10個ずつ成形してもらい、焼き上がりを比べました。形がそろったのは職人のやり方、速かったのは新人のやり方でした。結局、2号店は職人のやり方を基本にして、新人のやり方は仕込みが立て込む朝だけ使うことに決まりました。言い分の中身を確かめて、両方を生かせる答えを一緒に探すと、対立がやり方を見直すきっかけにもなります。

チームの意欲を引き出す工夫もあります。目標に向かって働く気持ちを高めるために与える報奨や動機付けをインセンティブといいます。店長は、研修の最後の試験に合格したら時給を上げる、と約束しました。お金だけでなく、仕事ぶりを認めて伝えることも、インセンティブの一つです。

もう一つは、任せることです。上の立場の人が持っている判断の権限を、下の立場の人に任せることを権限委譲(エンパワメント)といいます。店長は、2号店の朝の焼き上げの順番を決める権限を職人に任せました。毎朝、店長の返事を待たずに決められるので、判断が速くなります。

ここから基本情報!チームを動かすプロセス

メンバーの働きぶりを見て、言葉で返し、起きた問題を片付けながら、チームの力を高めていく活動をプロジェクト・チームのマネジメントといいます。基本情報のシラバスでは、資源の対象群のプロセスの一つです。成形の言い合いを試し比べで片付けたことも、合格したら時給を上げると決めたことも、このプロセスの中の仕事です。

基本情報の範囲ここまで

2-5活動の順序付け

研修の日程を決めようとしたミナトは、また手が止まりました。研修は1号店でできますが、試し焼きは2号店のオーブンが無いとできません。オーブンは内装工事が終わらないと据え付けられず、保健所の検査はオーブンが入ってからでないと受けられません。どの作業が、どの作業を待っているのか。ミナトはふせんの間に矢印を書き始めました。

作業には、前の作業が終わらないと始められないものと、ほかと関係なく進められるものがあります。この前後関係を図にすると、どこが詰まりやすいかが見えてきます。作業を矢印で表し、矢印の始まりと終わりを丸(結合点)でつないで前後関係を描く図をアローダイアグラムといい、この図を使って作業の順序と所要日数を分析する手法をPERT(Program Evaluation and Review Technique)といいます。PERTで描く図そのものをPERT図と呼ぶこともあります。

ミナトが書いた矢印を、表にまとめるとこうなります。

2号店の主な作業と前後関係
作業日数先に終わっている必要がある作業
A 内装工事21日なし
B オーブンの据え付け5日A
C 営業許可の検査7日B
D 試し焼き4日B
E アルバイトの採用10日なし
F 研修(1号店で)7日E
G 開店の準備3日C、D、F

開店の準備Gまでたどり着く道は三つあります。A→B→C→Gは21+5+7+3で36日、A→B→D→Gは21+5+4+3で33日、E→F→Gは10+7+3で20日です。三つのうち最も長い36日が、2号店の工事を始めてから開店までにかかる最短の日数になります。ほかの道がどれほど早く終わっても、Gは一番遅い道を待つからです。

この最も長い道をクリティカルパスといいます。クリティカルパスの上の作業が1日遅れると、開店も1日遅れます。開店日は工事の開始から36日目と決めてあるので、内装工事Aが1週間遅れれば開店は43日目になり、間に合いません。反対に、研修の道E→F→Gには16日の余裕があり、採用が数日遅れても開店日は動きません。

内装工事、オーブンの据え付け、営業許可の検査、開店の準備をつなぐ矢印が太い赤線で強調され、試し焼きと採用・研修の矢印は細い線で並んでいるアローダイアグラム
図:2号店のアローダイアグラム。太い線の道(36日)が開店日を決めている

ここから基本情報!作業の一覧から順序を決めるまで

前後関係を考える前に、ワークパッケージをもとに、プロジェクトに要る作業(アクティビティ)を一つ残らず書き出した一覧を作ります。これを活動リストといいます。上の表の左の列が、こむぎ堂の活動リストです。そこから作業どうしの依存関係を調べて決めた、作業を行う順番が活動順序です。

順序を図にする方法は、アローダイアグラムのほかにもう一つあります。作業を箱(ノード)で表し、箱どうしを矢印で結んで順序を示す方法で、PDM(Precedence Diagramming Method、プレシデンスダイアグラム法)といいます。アローダイアグラムでは矢印が作業でしたが、PDMでは箱が作業で、矢印は順序だけを表します。

PDMでは、前後関係を4種類に分けて書けます。

PDMの依存関係(先行=前の作業、後続=後の作業)
関係決まり2号店の例
FS関係(Finish to Start)先行が終わってから、後続が始まる内装工事が終わってから、オーブンの据え付けを始める
SS関係(Start to Start)先行が始まったら、後続も始められるチラシのデザインを始めたら、載せる写真の撮影も始められる
FF関係(Finish to Finish)先行が終わらないと、後続も終われない試し焼きで値段が決まるまで、値札づくりは終われない
SF関係(Start to Finish)先行が始まらないと、後続は終われない新しい冷蔵庫が動き始めるまで、借りている仮の冷蔵庫は返せない

いちばんよく使うのはFS関係で、SF関係はまれにしか出てきません。

前後関係には、時間のずれを付けることもできます。壁を塗り終えたら、塗料が乾くまで2日置いてから棚を取り付ける。このように、先行の作業が終わってから後続を始めるまでに、わざと置く待ち時間をラグといいます。反対に、厨房側の内装が仕上がったら、売り場側の工事が残っていてもオーブンの据え付けを5日前倒しで始める。このように、先行の終わりを待たずに後続を始める重なりの時間をリードといいます。

基本情報の範囲ここまで

アローダイアグラムを描くときには、一つ決まりがあります。同じ結合点から出て同じ結合点に入る矢印を2本描いてはいけません。2本あると、結合点の番号だけではどちらの作業か区別できなくなるからです。こむぎ堂の図では、営業許可の検査Cと試し焼きDが、どちらもオーブンの据え付けの後に始まり、どちらも開店の準備の前に終わります。そのままでは2本の矢印が同じ二つの結合点を結んでしまうので、区別のための矢印を1本足して描き分けます。

ここから基本情報!ダミー作業と、結合点の時刻

CとDの矢印が重ならないように、Dの終わりに結合点を一つ足し、そこから開店の準備の前の結合点へ点線の矢印を引きます。この点線は、順序の関係だけを表し、時間も資源も使わない矢印で、ダミー作業(ダミーアクティビティ)と呼びます。所要日数は0日として計算します。

結合点には時刻を書き込めます。ある結合点に入ってくる作業を、すべて最も早く終えた場合に、その結合点に着ける最も早い時刻を最早結合点時刻といいます。出発点を0日目として、矢印に沿って日数を足し、矢印が何本も入る結合点では一番大きい値を取ります。

2号店の最早結合点時刻
結合点入ってくる作業計算最早結合点時刻
出発なし00日目
内装が終わった点A0+2121日目
据え付けが終わった点B21+526日目
試し焼きが終わった点D26+430日目
研修が終わった点E→F0+10+717日目
開店の準備の前の点C、ダミー、F26+7=33、30+0=30、17 のうち最大33日目
開店G33+336日目

最後の結合点の最早結合点時刻36日目が、プロジェクト全体にかかる最短の日数です。なお、作業(矢印)の側から見た「その作業を最も早く始められる時刻」は最早開始時刻と呼び、矢印の出る結合点の最早結合点時刻と同じ値になります。

基本情報の範囲ここまで

2-6期間の見積り

アローダイアグラムを見せると、店長は内装工事の矢印を指でたたきました。「この21日って、どこから出てきた数字?」。ミナトは答えに詰まります。内装業者が電話で「3週間くらいですかね」と言ったのを、そのまま書いただけでした。

図の計算がどれほど正確でも、矢印に書いた日数があいまいなら、開店日もあいまいになります。日数の出し方にはいくつかの型があり、手元にある情報の量と、どれくらいの正確さが要るかで使い分けます。

ここから基本情報!日数の見積り方

一つ一つの作業を終えるのに要る期間を、割り当てる人や機器を踏まえて見積もる活動を、PMBOKの版によってはアクティビティ所要期間見積りと呼びます(基本情報のシラバスでは「活動期間の見積り」)。その結果として出てくる、作業ごとの期間の数値が活動所要期間見積りです。シラバスでは「活動所用期間見積り」と書かれています。

一つめの型は、似た過去の仕事の実績をもとにする方法です。5年前に1号店を改装したときは、内装工事に24日かかりました。2号店は少し狭いので、それより少し短いと見込みます。このように、過去の似たプロジェクトの実績値を基準に期間や費用を見積もる方法を類推見積りといいます。早く出せますが、似ている度合いを見誤ると外れます。

類推見積りのように、先に全体の大きさをつかみ、それを各作業に割り振っていく見積り方をトップダウン見積りといいます。「内装は全部で24日くらい。そのうち床に4日、壁に6日」という順で数字が決まっていきます。

二つめの型は、過去のデータから、規模と日数の間の決まった関係(係数)を見つけて計算する方法です。内装業者によると、床張りは1日に15㎡ずつ進みます。2号店の床は60㎡なので、60÷15で4日です。このように、過去の実績から導いた統計的な関係と、規模などの数値(パラメータ)から期間や費用を求める方法をパラメトリック見積りといい、パラメトリック見積法とも呼びます。過去の実績に規模の係数を掛けて概算を出す係数見積法も、同じ考え方の見積り方です。

三つめの型は、一つの値で言い切らず、三つの値を出す方法です。うまく進んだ場合の楽観値、いちばんありそうな最可能値、悪く転んだ場合の悲観値を見積もり、次の式で期待値を求めます。

期待値 =(楽観値 + 4 × 最可能値 + 悲観値)÷ 6

内装工事について業者に聞き直すと、楽観値は16日、最可能値は21日、悲観値は26日でした。式に入れると(16+4×21+26)÷6=126÷6=21日です。この方法を三点見積り(三点見積法)といいます。PERTで使われてきた式なので、PERT見積法とも呼ばれます。

四つめの型は、トップダウンの反対で、WBSの下の作業から一つずつ見積もって積み上げる方法です。内装工事のワークパッケージを足すと、解体2日、配管4日、床4日、壁6日、照明3日、仕上げ2日で、合計21日になります。このように、細かい作業ごとの見積りを積み上げて全体を求める方法をボトムアップ見積り(ボトムアップ見積法)といいます。手間はかかりますが、WBSが細かくできていれば、四つの中で最も正確になりやすい方法です。

見積りが出ても、それをそのまま日程に書くとは限りません。悲観値の26日が現実になることもあるからです。見積りに、不確かさに備えた余裕(予備)をどれだけ足しておくかを検討する分析を予備設定分析(予備分析)といいます。PMBOKでは、すでに特定して対応を決めたリスクに備える予備(コンティンジェンシー予備)と、まだ見えていない出来事に備える予備(マネジメント予備)を分けて考えます。こむぎ堂では、内装工事に2日の予備を持たせるかどうかを、店長と相談することにしました。

基本情報の範囲ここまで

見積りの出し方を変えても、内装工事の日数は21日のままでした。違ったのは、店長に「どこから出てきた数字か」を説明できるようになったことです。業者の「3週間くらい」は、三つの値と、ワークパッケージの積み上げで裏付けられました。

2-7スケジュールの作成

日数がそろったので、ミナトは事務所の壁に大きな紙を貼りました。開店日まで、何をいつからいつまでやるのかを、店のみんなが一目で分かるようにするためです。大家さんからは「工事は平日の9時から18時まで。日曜は駅前の通りが歩行者天国になるので、搬入できません」と連絡が来ていました。

作業ごとに、いつ始めていつ終えるかを時間の順に並べた予定表をスケジュールといいます。アローダイアグラムは順序と日数を示しますが、「来週の水曜に何をしているか」は図から読み取りにくい形です。そこで、カレンダーの日付に作業を割り付けます。

割り付けた結果を見せるのによく使うのが、縦に作業を並べ、横軸に日付をとって、作業の期間を横棒で描く表です。これをガントチャートといいます。横棒の長さで期間が、位置で時期が分かるので、どの作業が同じ時期に重なっているかが一目で見えます。一方で、作業の前後関係は棒の並びだけでは読み取りにくいので、アローダイアグラムと組み合わせて使います。

ここから基本情報!日程を組む決まりと分析の技法

大家さんの連絡のように、日程を組むときに選べる幅を狭める条件をスケジュールの制約といいます。日曜は搬入できない、開店日は動かせない、保健所の検査は予約した日にしか受けられない、といったものです。

作業の順序と日数、それに制約を合わせて、スケジュールを組み立てて分析する活動をスケジュールネットワーク分析といいます。その代表的な技法が、各作業の日数から最も長い経路(クリティカルパス)を求め、プロジェクト全体の最短の期間を決めるCPM(Critical Path Method、クリティカルパス法)です。2-5節で求めた36日の道が、CPMで求めたクリティカルパスにあたります。

CPMは、作業どうしの順序だけを見ています。ところが実際には、試し焼きと研修のどちらも店長が受け持つ、というように、人や機器の取り合いでも日程は決まります。作業の依存関係に加えて資源の制約も考え、各作業に少しずつ持たせていた余裕(バッファ)を、最後に一か所にまとめて管理する手法をクリティカルチェーン(クリティカルチェーン法)といいます。作業ごとに余裕を持たせると、その余裕を使い切ってから急ぐことになりがちだからです。

日程の上には、節目となる時点の印も置きます。重要な成果物ができた時点や、段階が終わる時点をマイルストーンといい、それ自体は期間を持ちません。こむぎ堂では「内装の完了(21日目)」「営業許可(33日目)」「開店(36日目)」の三つをマイルストーンにしました。

日程の表は、細かさの違う3種類を使い分けます。

日程計画表の3種類
表細かさこむぎ堂の例
大日程計画表(マスタスケジュール)プロジェクト全体を見通す、最も大まかな表。主なマイルストーンを示す開店までの全体の流れと、三つのマイルストーン
中日程計画表(工程別作業計画)工程ごとの作業の計画を示す、中くらいの細かさの表内装工事の中の、解体から仕上げまでの日程
小日程計画表(週間作業計画)週単位などで、一つ一つの作業の予定を示す最も細かい表今週、誰が何曜日に何をするか

事務所の壁に貼ったのは大日程計画表で、内装業者には中日程計画表を、アルバイトには小日程計画表を渡します。見る人によって、要る細かさが違うからです。

基本情報の範囲ここまで

2-8スケジュールの管理

工事が始まって3週間目の月曜、ミナトは2号店の様子を見に行きました。床は張り終わっているはずの日です。ところが、売り場の奥の一角には、まだ床材が積まれたままでした。業者の職人が一人、熱を出して休んでいたのです。

日程は、作ったら終わりではありません。計画と実際を比べ、ずれていれば手を打ちます。そのためには、まず進み具合を数字でつかみます。計画した作業の量のうち、実際にどれだけ終わったかを割合で表したものを進捗率といいます。床は60㎡のうち45㎡まで張り終わっていたので、進捗率は45÷60で75%です。予定では、この日に100%になっているはずでした。

数字を集めたら、関係者に伝わる形にまとめます。集めた記録を整理・分析し、いまの状況と、このままだとどうなるかの見通しをまとめた報告を進捗報告といいます。ミナトが店長に送った進捗報告には「床は75%。残りの15㎡に1日、休んだ職人の分の遅れも合わせ、内装の完了は予定より4日遅れる見込み。内装はクリティカルパスの上にあるので、このままでは開店も4日遅れる」と書かれていました。

ここから基本情報!記録から報告へ、ずれの傾向

計画と実績の違いをつかみ、スケジュールの変更を管理する活動を、PMBOKの版によってはスケジュール・コントロールと呼びます(基本情報のシラバスでは「スケジュールの管理」)。

この活動の材料になるのは、作業の現場で集めた、まだ分析や加工をしていない記録です。「床:45㎡完了」「職人1名休み」のような生の記録を進捗データといいます。進捗データを整理し、「4日遅れる見込み」のような見通しを加えたものが進捗報告です。データのままでは、店長は何を決めればよいか分かりません。

ずれは、一日だけを見るより、続けて見たほうが性質が分かります。計画値と実績値の移り変わりを時間の順にグラフにして、ずれの傾向をつかむ図をトレンドチャートといいます。こむぎ堂の床の実績の線は、職人が休んだ日から計画の線と離れ始めていました。離れ方が広がり続けているなら、手を打たないと遅れはもっと大きくなります。

基本情報の範囲ここまで

遅れが分かったら、取り戻す方法を考えます。クリティカルパスの上にない作業をいくら急いでも、開店日は早まりません。手を打つのは、内装工事のようにクリティカルパスの上にある作業です。

ここから基本情報!期間を縮める二つの方法と、人の偏りを均す方法

一つめは、お金をかけて人や機器を増やし、作業の期間を縮める方法で、クラッシングといいます。内装業者に職人をもう一人回してもらえば、残りの工事は早く進みますが、その分の費用がかかります。

二つめは、本来は順番に行う作業の一部を重ねて、同時に進める方法で、ファストトラッキングといいます。内装工事が全部終わるのを待たず、厨房側が仕上がった時点でオーブンの据え付けを始めれば、その分だけ早く終わります。費用はあまり増えませんが、売り場側の工事と据え付けが同じ建物の中で同時に進むので、手戻りや事故の危険が増えます。

日程を縮めると、人の取り合いも起きやすくなります。作業の開始や終了の時期を動かして、特定の時期に人や機器の使い方が集中しないように均す手法を資源平準化といいます。研修の道には16日の余裕があるので、研修の時期を後ろにずらし、店長が試し焼きと研修を同じ週に受け持たないようにできます。

基本情報の範囲ここまで

火曜の夜、事務所の壁の工程表に、ミナトは赤いペンで太い線を引きました。内装工事、オーブンの据え付け、営業許可の検査、開店の準備。開店日を決めているのは、この一本の道です。内装業者と相談して、厨房側の床と壁を先に仕上げてもらい、据え付けを5日前倒しで始めることになりました。4日の遅れを5日の重なりで取り戻し、開店は36日目のまま、1日の余裕まで残ります。店長は「営業許可」のふせんを、工程表のいちばん目立つ所に貼り直しました。ただ、ミナトには気になることが一つ残っています。前倒しにした分、業者への支払いは、いつ、いくら増えるのでしょうか。

この章のふりかえり

この章で太字にした用語は、暗記カードで覚えられます。

ITパスポートの範囲(16語)を暗記カードで覚える 基本情報まで(69語)を暗記カードで覚える

カードの「カテゴリ」は、この章の節の名前です。同じボタンでもう一度取り込んでも、復習の進み具合は消えません。