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  4. 第2章 e-ビジネス

ビジネスインダストリ 第2章 ストラテジ系・大分類:経営戦略

e-ビジネス

ネットで売り買いし、お金を払い、企業どうしがデータを交換する仕組みと、ソーシャルメディア。

2-1電子商取引の場

水曜の夕方、こむぎ堂の通販の管理画面に、見慣れない注文が入っていました。隣町の喫茶店「ひだまり」からで、備考の欄には「毎週月曜にロールパンを50個。支払いは月末にまとめて請求してください」とあります。同じ日の夜、常連のお客さんから店長に電話がかかってきました。「フリマアプリで、こむぎ堂のラスクが売られていたよ。それも定価の倍で」。店では1袋380円のラスクが、送料込みで800円の値を付けられていたそうです。店長は管理画面とフリマアプリの画面を並べて、首をかしげます。「お店とお客さん、お店とお店、お客さんどうし。同じネットの売り買いなのに、ずいぶん勝手が違うみたいだね」。ミナトは相棒に、ネットの取引にはどんな形があるのかを聞いてみることにしました。

パン屋のカウンタで、ノートパソコンに喫茶店からのロールパン50個のまとめ注文、スマートフォンにフリマアプリで高値で出品されたラスクの画面が映り、店長とアルバイトが見比べている
図:同じ日に届いた2つの「ネットの取引」。喫茶店からのまとめ注文と、フリマアプリに出品されたラスク

インターネットなどのネットワークを通じて商品やサービスを売り買いすることを、EC(Electronic Commerce:電子商取引)といいます。こむぎ堂の通販も、喫茶店からの注文も、フリマアプリでのラスクの売り買いも、どれも電子商取引です。店舗で売るのと違って、建物も店番も要らないので、少ない元手で商売を始められます。こむぎ堂が通販を始めたときにかかったのも、通販の仕組みの利用料と、商品の写真を撮る手間くらいでした。

店を構えずに売るやり方そのものは、インターネットより古くからあります。カタログを見て電話やはがきで注文する通信販売、家を一軒ずつ回る訪問販売、自動販売機などをまとめて無店舗販売と呼びます。ネットの通販は、無店舗販売の新しい形の一つです。

ここから基本情報!ネットの事業の広がり

インターネットを使って行う事業をまとめてインターネットビジネスと呼びます。商品を売る通販だけでなく、広告で収入を得る検索サイトや、利用料を取る動画の配信なども含む、広い呼び方です。

そのうち、消費者がWebサイト上の店で商品を選び、注文して買う仕組みがオンラインショッピング(ネットショッピング)です。こむぎ堂の通販は、オンラインショッピングの店の一つにあたります。

基本情報の範囲ここまで

店が自分のサイトを一つ持つ代わりに、多くの店が一か所に集まって出店する場もあります。複数のネットショップを集め、利用者がまとめて商品を検索し、同じ手順で買えるようにしたサイトをオンラインモールといいます。運営者は決済や集客の仕組みを用意し、出店料や売上に応じた手数料を受け取ります。小さな店にとっては、自分でお客さんを集めなくても、モールに来た人の目に留まる機会が得られます。

売り手と買い手がどちらも多数いて、その間の取引を仲立ちする電子的な市場はeマーケットプレイス(電子マーケットプレース)と呼ばれます。企業どうしが資材を調達する場としてよく使われ、小麦粉やバターを仕入れたい多くのパン屋と、売りたい多くの卸業者が、同じ場で値段や条件を比べられます。オンラインモールは店の集まりで、買うのは主に消費者です。eマーケットプレイスは、多数の売り手と多数の買い手を引き合わせる市場そのものを指します。

値段を売り手が決めず、買いたい人どうしが値を競り合い、いちばん高い値を付けた人が買う仕組みもあります。これをWebサイトの上で行うのが電子オークションです。出品する人も入札する人も、全国どこからでも参加できます。

ネットで売ると、並べられる商品の数も変わります。店の棚には限りがあるので、売れ筋を優先して並べるしかありません。通販のページには棚の制約がなく、月に十数個しか売れない商品も置いておけます。こむぎ堂の通販の、ある月の販売数を並べてみます。

こむぎ堂の通販の1か月の販売数
商品のまとまり品数1品あたりの販売数合計
売れ筋(食パン・クロワッサン・ラスク)3品平均200個600個
それ以外(季節のパン、焼き菓子、ジャムなど)40品平均15個600個

1品ずつ見ればわずかな数でも、40品を足すと 40 × 15 = 600個になり、売れ筋の3品と同じだけ売れています。販売数の多い順に棒グラフにすると、左に高い棒が数本立ち、右へ低い棒が長く続きます。その長い尾の部分の合計が、売上の大きな割合を占める現象をロングテールといいます。在庫や陳列の費用が小さいネットの店で起きやすい現象です。

お金の取り方にも、ネットならではの形があります。こむぎ堂が使っている売上管理のアプリは、1店舗の集計までなら無料で、複数店舗の集計や詳しい分析を使うと月額の料金がかかります。基本の機能を無料で配って利用者を集め、高度な機能を使いたい一部の人から料金を受け取る収益の形をフリーミアムと呼びます。free(無料)と premium(割増の料金)を合わせた言葉です。無料の利用者を増やす費用が小さいので、払う人が一部でも商売が成り立ちます。

2-2取引の形態

喫茶店の注文を受けるため、ミナトは通販の設定を見直し始めました。一般のお客さんは1個から買い、その場でカードで払います。喫茶店は毎週50個を決まった曜日に受け取り、月末にまとめて払いたいと言っています。そこへ市役所から、秋のマルシェに出店するなら申込みはオンラインで、という案内も届きました。相手が変わると、決めることがこんなに変わるのか、とミナトは思いました。

電子商取引は、誰と誰の取引かで呼び分けます。売り手と買い手が、企業か、消費者か、行政かによって、1回の量も、支払いの方法も、使う仕組みも違うからです。喫茶店との取引は企業どうし、通販のお客さんとの取引は企業と消費者、フリマアプリのラスクは消費者どうしの取引です。

ここから基本情報!取引の相手で分ける呼び方

取引の相手は、Business(企業)、Consumer(消費者)、Government(行政)の頭文字で表します。売る側を左、相手を右に置き、間に to を挟みます。

取引の相手による電子商取引の分類
呼び方誰と誰の取引かこむぎ堂のまわりの例
BtoB企業と企業喫茶店がロールパンを毎週仕入れる。こむぎ堂が製粉所から小麦粉を仕入れる
BtoC企業と一般の消費者お客さんが通販でラスクを買う
CtoC消費者と消費者買ったラスクを、別の人がフリマアプリで売る
DtoC作り手(メーカー)が、問屋や小売店を通さず消費者へ直接製粉所が自社のサイトで、家庭向けの小麦粉を売る
GtoB行政と企業市役所がマルシェの出店をオンラインで受け付ける。公共工事の入札を電子化する
GtoC行政と住民住民が住民票の写しの交付をオンラインで申請する

BtoBは1回の量が多く、同じ相手と繰り返し取引し、代金は月末にまとめて請求する、という形が多くなります。BtoCは1回の量が少なく、相手が毎回違い、その場で払います。喫茶店の注文が通販の画面に収まりにくかったのは、BtoBの取引をBtoCの仕組みで受けようとしたからです。DtoCの D は Direct(直接)で、作り手が流通の途中を飛ばして消費者とじかにつながる点に特徴があります。

こむぎ堂、喫茶店、お客さん、市役所、製粉所の間に矢印が引かれ、矢印ごとにBtoB、BtoC、CtoC、DtoC、GtoB、GtoCの札が付いている
図:誰と誰の取引かで、電子商取引の呼び方が変わる

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取引の相手が、社外ではなく自社の従業員になる場合もあります。企業が従業員に向けて、自社の商品を割安で買える社内販売のサイトを開いたり、福利厚生や社内の手続きの案内をWebで届けたりする形をBtoE(Business to Employee)と呼びます。

ネットと実店舗をつなぐ取引もあります。こむぎ堂が通販サイトやSNSで「本日のメロンパン焼き上がり15時。この画面を見せると50円引き」と知らせれば、ネットで情報を見た人が店まで足を運びます。このように、オンライン(ネット)で届けた情報やクーポンで、オフライン(実店舗)での買い物を促す取り組みをOtoO(O2O、Online to Offline)といいます。

さらに進めて、ネットと店の区別そのものをなくす考え方がOMO(Online Merges with Offline)です。通販で予約して店で受け取る、店で貯めたポイントを通販で使う、どちらで買っても同じ会員の記録に残る。お客さんから見ると、ネットの店と町の店が一つの店として続いています。

ネットは、仕事を頼む相手を探す場にもなります。店長は、こむぎ堂のロゴを新しくしたいと考えていました。デザイン事務所に頼む代わりに、インターネット上で不特定多数の人に仕事を募集し、応募された案の中から選んで報酬を払う方法があります。これをクラウドソーシングといいます。crowd(群衆)と sourcing(調達)を合わせた言葉です。

2-3電子決済

土曜の午後、喫茶店の店主から電話がありました。「月末の支払いは、ネットで振り込んでおきますね」。電話を切ったとたん、レジの前のお客さんが「QRコードで払えますか」と聞き、その後ろの人は交通系のICカードを取り出しています。現金を受け取ったのは、この1時間で2人だけでした。

喫茶店の店主は、銀行の窓口にもATMにも行かずに支払いを済ませるつもりです。Webサイトやスマートフォンのアプリから、残高の確認や振込などの銀行の取引ができるサービスをインターネットバンキング(ネットバンキング)といいます。同じように、株式などの売買の注文を、証券会社の窓口や電話を通さずにインターネットで出すことをインターネットトレーディング(ネットトレーディング)と呼びます。

ここから基本情報!お金のやり取りの呼び方

預金、融資、送金、株式の売買のように、お金や金融商品をやり取りすることをまとめて金融取引といいます。インターネットバンキングもインターネットトレーディングも、金融取引をネットワークの上で行うものです。

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振込のボタンを押しても、銀行から銀行へ現金が運ばれるわけではありません。動くのは、口座の残高を書き換えるためのデータです。資金の移動を、現金を使わずにデータ通信で処理する仕組みをEFT(Electronic Fund Transfer:電子資金移動)といいます。給与の振込や、公共料金の口座振替も、EFTの上に成り立っています。

店頭で使われるカードにも、仕組みの違いがあります。カードの中に小さなICチップを埋め込み、データを記録したり計算したりできるようにしたものをスマートカード(ICカード)と呼びます。裏面の磁気の帯にデータを記録する磁気カードより多くの情報を持てて、暗号の計算をチップの中で行えるので、偽造されにくいのが特徴です。

電波を使って、ICタグに記録された情報を離れた所から読み書きする技術がRFID(Radio Frequency Identification)です。電波が届けば、タグが箱の中にあっても読めますし、複数のタグをまとめて読むこともできます。衣料品店で、かごに入れた服の値段がまとめて読み取られるレジには、この技術が使われています。

ICカードやRFIDを、乗車券、社員証による入退室の管理、商品や荷物の管理などに応用したシステムを、まとめてICカード・RFID応用システムと呼びます。交通系ICカードで改札を通るのも、図書館で本を何冊か重ねたまま貸出の手続きをするのも、その例です。

現金を使わずに支払うことを、まとめてキャッシュレス決済といいます。こむぎ堂のレジの前で起きていたことを、支払いの方式で分けると次のようになります。

スマートフォンなどを使うキャッシュレス決済の方式
方式払い方こむぎ堂での場面
非接触IC決済ICチップを内蔵したカードやスマートフォンを、店の端末にかざす。近い距離の無線でデータをやり取りする交通系ICカードをレジの読み取り機にかざす
QRコード決済スマートフォンのアプリで、店が掲げたQRコードを読み取るか、自分の画面のコードを店に読み取ってもらうレジ横に置いたQRコードを、お客さんが自分のスマートフォンで読む
スマートフォンのキャリア決済代金を携帯電話会社の通信料金と合わせて、後でまとめて払う通販のラスクの代金を、毎月のスマートフォンの料金と一緒に払う

交通系ICカードの中に入っているのは、お金の代わりになる金額の情報です。ICカードやスマートフォンに金額の情報を記録し、現金の代わりに支払いに使う仕組みを電子マネーといいます。先に入金(チャージ)しておくプリペイド型と、使った分を後で請求されるポストペイ型があります。

同じカードの形をしていても、お金が口座から出ていく時期はさまざまです。デビットカードは、支払ったその時点で、自分の銀行口座から代金がすぐに引き落とされるカードです。口座の残高を超えては使えません。

2-4フィンテックとデジタル通貨

開店から12年使ってきたオーブンの温度が、最近ときどき安定しません。買い替えには200万円ほどかかります。店長がネットで調べていると、「多くの個人からお金を集めて、事業者に貸し出します」というサービスの広告が出てきました。その横では、ミナトがニュースを読み上げています。「デジタルの絵が、何千万円で売れたんだって」

店長が見つけた広告も、レジのQRコード決済も、ITを使って金融のサービスを新しく作り直す動きの一部です。決済、送金、融資、資産運用、家計の管理などの金融の分野に、情報技術を応用したサービスをフィンテック(FinTech)と呼びます。Finance(金融)と Technology(技術)を合わせた言葉です。

店長が見つけたのは、ソーシャルレンディングと呼ばれる仕組みです。お金を貸したい多くの人から、インターネット上でお金を集め、それをまとめてお金を借りたい事業者に貸し出します。日本では、借り手の多くは企業です。お金を出した人は、借り手が払う利息をもとにした分配金を受け取ります。クラウドファンディングのうち、お金を貸す形をとるものにあたります。借りた側が返せなくなれば、出した人のお金は戻らないことがあります。

お金そのものも、データの形をとり始めています。多くはブロックチェーンという技術を使い、インターネット上でやり取りされる財産的な価値を暗号資産(仮想通貨)といいます。代表例はビットコインです。国が価値を保証する法定通貨ではなく、値段は買いたい人と売りたい人の多さで決まるので、短い間に大きく上下します。日本の法律(資金決済に関する法律)では、2020年5月に施行された改正から、以前の「仮想通貨」ではなく「暗号資産」という名前が使われています。

これに対して、国の中央銀行が発行する、デジタルの形の法定通貨をCBDC(Central Bank Digital Currency:中央銀行発行デジタル通貨)といいます。発行するのが中央銀行なので、1円は1円の価値を持ち、紙幣や硬貨と同じように使えることを目指しています。電子マネーとも違います。電子マネーは民間の会社が発行し、円の金額を記録して使う仕組みです。CBDCは、円そのものをデジタルにしたものです。導入をどこまで進めているかは国によってさまざまで、検討や実験の段階にある国も多くあります。

ミナトが読み上げたニュースの絵は、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)として売られたものでした。ブロックチェーン上に、そのデジタルデータに結び付いた、ほかと取り替えのきかない識別情報(トークン)を記録し、誰がそれを持っているかを示せるようにしたものです。1万円札はどの1枚とも取り替えがききますが、NFTは1つずつが別のものとして扱われます。

フリマアプリの取引も、お金の流れを工夫して成り立っています。知らない人どうしの取引では、売り手は「お金を払ってもらえるか」を、買い手は「商品が届くか」を心配します。そこで、買い手が払った代金を運営者がいったん預かり、買い手が商品を受け取ったと連絡してから売り手に渡す仕組みが使われています。このように、取引の間に信頼できる第三者が入り、代金や商品の受け渡しを仲立ちするサービスをエスクローサービスといいます。

2-5電子商取引の留意点

喫茶店の店主が、家計簿のアプリを勧めてくれました。「銀行の口座もカードも、全部つなぐと、売上と仕入れが一つの画面で見られて便利だよ」。店長はうなずきかけて、手を止めます。「銀行のパスワードを、アプリの会社に教えるってこと?」。その翌日、通販に新しい決済サービスを入れようと申し込んだら、今度は「スマートフォンで運転免許証とご自身の顔を撮影してください」と画面に出てきました。

喫茶店の店主が使っているのは、複数の銀行口座やクレジットカード、証券口座などの情報を、一つのサービスでまとめて見られるようにする仕組みで、アカウントアグリゲーションと呼ばれます。お金の出入りを一か所で確かめられるのは確かに便利です。

店長の心配にも理由があります。利用者が各銀行のIDとパスワードをサービスの会社に預け、会社がそれを使って本人の代わりにログインして情報を集める方式では、その会社から情報が漏れると、つないだ口座がまとめて危険にさらされます。そのため、銀行が用意した決まった窓口(API)を通して、利用者が認めた情報だけを受け渡す方式が広がっています。つなぐ前に、どの方式で、どの情報を、どの会社に渡すのかを確かめることになります。

決済サービスの申込みで求められたのは、オンラインでの本人確認です。金融の取引では、相手が本当に名乗っているとおりの人かを確かめることが法律で求められる場面があります(KYC:Know Your Customer)。窓口で書類を見せる代わりに、スマートフォンで本人確認書類と自分の顔を撮影して送るなど、本人確認の手続きをオンラインで完結させる仕組みをeKYC(electronic Know Your Customer)といいます。他人になりすまして口座を作られるのを防ぐための手続きです。

本人確認が厳しくなる背景には、犯罪で得たお金の流れがあります。犯罪で得たお金を、何度も送金したり別の資産に替えたりして出どころを分からなくすることを、マネーロンダリング(資金洗浄)といいます。ネットの送金や決済が速く手軽になるほど、こうした悪用やテロ組織への資金の供与にも使われやすくなります。取引を監視して怪しい動きを見つけたり、取引の相手を注意すべき人や組織の一覧と照らし合わせたりして、これらを防ぐ対策を支える仕組みをAML・CFTソリューション(Anti-Money Laundering・Countering the Financing of Terrorism:マネーロンダリング・テロ資金供与対策)と呼びます。

2-6EDIと標準

喫茶店との取引が始まって2週間がたちました。注文は毎週日曜の夜にファクスで届き、月曜の朝にミナトが通販の管理画面へ打ち直しています。今朝のファクスはかすれていて、「50」が「30」にも見えました。電話で確かめると、店主が笑いながら言います。「うちは仕入先が10社あって、注文書の書式が全部違うんだよね」

ファクスを打ち直す手間も、かすれた数字の読み違いも、注文が紙で届くことから生まれています。企業どうしが、受発注、出荷、請求などの取引のデータを、決められた形式で、通信回線を通じて交換する仕組みをEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)といいます。喫茶店のシステムが出した注文のデータが、そのままこむぎ堂のシステムに取り込まれるので、打ち直しも読み違いも起きません。郵送やファクスを待つ時間もなくなります。

ただし、昔ながらのEDIは、専用の回線や専用のソフトウェアをそろえる必要があり、取引の多い大きな企業どうしで使われるのが中心でした。こむぎ堂と喫茶店のような小さな店どうしでは、それをそろえる費用が見合いません。

ここから基本情報!ブラウザで使うEDI

専用の回線やソフトウェアを使わず、インターネットとWebブラウザで企業間のデータ交換を行う方式をWeb-EDIといいます。こむぎ堂が受注の画面を用意すれば、喫茶店はブラウザでその画面を開いて注文を入れるだけで済みます。始める費用が小さいのが利点です。

一方で、注文する側から見ると、取引先ごとに画面も操作も違います。仕入先が10社あれば10通りの画面に手で入力することになり、入力した内容を自分の店のシステムに取り込むには、もう一度打ち直す手間が残ります。

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EDIでデータを交換するには、2社の間で決めておくことがいくつもあります。どんな通信の方法で送るのか、「ロールパン50個」をどんな形式のデータで表すのか、何時までの注文をその日に受けるのか。業界や国で標準の形式が決まっていれば、取引先ごとに一から取り決める手間が減ります。

ここから基本情報!EDIの4つの取り決めと標準

EDIで取り決める内容は、通信の層から取引の契約の層まで、4つの規約に分けて整理されます。

EDIで2社が取り決める4つの規約
規約決める内容こむぎ堂と喫茶店の例
情報伝達規約データを送る通信の方法(回線、通信の手順など)インターネットで、どの手順で送るか
情報表現規約データの形式(項目の並び、書き方、コードの意味)「商品コード・数・納品日」をどの順に、どう書くか
業務運用規約業務の進め方(運用の時間、障害のときの対応など)日曜の21時までの注文を翌週の月曜に納める。送れないときは電話で連絡する
基本取引規約取引そのものの契約(当事者の権利と義務、データが届いた時点で契約が成り立つかなど)注文のデータが届いた時点で、注文を受けたことにする

上の行ほどコンピュータどうしの約束に近く、下の行ほど人と人、会社と会社の約束に近くなります。どれか一つが欠けても、データは届いたのに注文が成り立たない、といったすれ違いが起きます。

喫茶店とパン屋の間を注文のデータが行き来し、その下に情報伝達規約、情報表現規約、業務運用規約、基本取引規約の4つの層が重なっている
図:1件の注文データの行き来を支える、EDIの4つの規約

情報伝達規約の層には、業界ごとに使われてきた通信手順があります。JCA手順は、日本チェーンストア協会(Japan Chain Stores Association)が定めた、小売りのチェーン店と取引先が受発注のデータをやり取りするための通信手順です。全国銀行協会手順(全銀協手順)は、全国銀行協会が定めた、金融機関と企業などの間で振込や入金のデータを送るための通信手順です。

情報表現規約の層には、データの書き方の標準があります。JIS X 7011-1は、国際的なEDIの構文規則であるEDIFACT(行政、商業及び輸送のための電子データ交換)の構文規則を定めた日本産業規格です。JIS X 7012-1は、日本で作られた行政・産業向けの情報交換の構文規則(CIIシンタックスルール)の第1部です。どちらも、取引のデータを「どの項目を、どの順で、どう区切って書くか」を決めています。

データの形式に、タグで項目の意味を書き添えられるXMLを使う方式はXML-EDIと呼ばれます。項目の名前と値をセットで書けるので、取引先ごとに項目が多少違っても、データの構造を柔軟に表せます。

取引の伝票ではなく、製品の形や属性のデータを交換するための標準もあります。STEP(Standard for the Exchange of Product Model Data)は、製品モデルデータの表現と交換に関する国際標準(ISO 10303)です。ある会社のCADで設計した部品の形を、別の会社の別のソフトウェアでも読めるようにするために使われます。

基本情報の範囲ここまで

2-7ソーシャルメディア

ラスクの転売の話は、思わぬ方向へ広がりました。フリマアプリで買った人が「定価の倍でも買う価値があった」と写真付きで投稿し、それが何千回も共有されたのです。週末、通販のラスクの注文はふだんの3倍になり、商品ページのレビューの欄には星5つの感想が並びました。店長は画面をのぞき込んで言います。「誰が、どこで、うちの話をしているんだろう」

利用者どうしがつながり、文章や写真を投稿して共有し合うサービスをSNS(Social Networking Service)といいます。SNSを含め、利用者が発信した内容でできていて、利用者どうしのやり取りで広がっていくメディアを、まとめてソーシャルメディアと呼びます。こむぎ堂のラスクの話は、店が一度も宣伝しないまま、ソーシャルメディアの上で広がりました。

ソーシャルメディアには、SNSより前からある形もあります。利用者が書き込んだメッセージを、ほかの利用者が読んだり返信したりできるWeb上の仕組みが電子掲示板(BBS)です。話題ごとに書き込みが積み重なり、知らない人どうしが同じ話題で語り合えます。個人や組織が、日記のように記事を時系列に積み重ねて発信していくWebサイトの形式はブログと呼ばれます。

ここから基本情報!消費者がつくるメディア

ブログのうち、短い文章を手軽に投稿し、ほかの人と共有する形のサービスをミニブログといいます。X(旧Twitter)が代表例です。一つの投稿が短いので、読んだ人がすぐに共有し直せ、話題が速く広がります。

電子掲示板の書き込みも、ブログの記事も、ラスクの感想の投稿も、作ったのはメディアの会社ではなく一般の消費者です。このように、消費者が発信した文章や画像、動画で中身ができているメディアをCGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)と呼びます。

基本情報の範囲ここまで

通販の商品ページに並んだ星の数と感想は、実際にラスクを買って食べた人が書いたものです。商品やサービスを使った人が、その感想や評価をインターネット上に投稿したものをユーザレビューといいます。これから買う人にとっては、店の説明文よりも信用できる判断の材料になることがあります。

人が投稿するのは、感想だけではありません。スマートフォンは、歩いた歩数、いた場所、買った物、撮った写真を、持ち主が意識しないうちに記録し続けています。日々の行動や体の状態などを、デジタルのデータとして記録し、蓄積することをライフログといいます。

ライフログのような個人のデータは、企業から見ると商品やサービスを作るための貴重な材料です。そこで、個人が自分のデータを預け、本人が同意した範囲で企業などの第三者に提供し、その見返りを本人が受け取れるようにする仕組みが考えられました。データを預かって管理し、提供先を本人に代わって判断する事業者を情報銀行と呼びます。お金を預ける銀行になぞらえた名前です。

インターネットでつながると、モノや場所、スキルも人と分け合えるようになります。個人が持っている資産や技能を、インターネットを通じてほかの人に貸したり提供したりして共有する経済のあり方をシェアリングエコノミーといいます。こむぎ堂は配達用の車を持っていません。週に一度の喫茶店への配達には、登録した会員どうしで1台の車を必要な時間だけ使い合うカーシェアリングを使っています。

ネットでの行動の記録は、広告にも使われます。ミナトは、一度こむぎ堂のラスクのページを見ただけなのに、別のニュースサイトでもラスクの広告が出てくるようになりました。利用者が見たページや買った商品などの行動の履歴から関心を推し量り、人ごとに違う広告を表示する手法を行動ターゲティング広告といいます。

店長の「誰が、どこで」という問いには、店の側の記録から答えられます。通販サイトのサーバには、どのページが、いつ、どこからのリンクで開かれたかが記録されています。この記録(アクセスログ)を集計して、閲覧者がどこから来て、どのページを見て、どこで離れたかを調べることをアクセスログ分析といいます。こむぎ堂の週末のアクセスログを調べると、ラスクのページを開いた人の多くが、SNSの投稿に貼られたリンクからやって来ていました。

その翌週、店長とミナトは、喫茶店との受発注の形を決めました。こむぎ堂が受注の画面を用意し、喫茶店はブラウザでその画面を開いて注文を入れます。注文は数字のデータのまま、こむぎ堂の管理画面に入ります。次の月曜の朝、ファクスの機械は静かなままでした。管理画面には、日曜の夜のうちに「ロールパン 50個」と入っています。かすれた数字を読む必要は、もうありません。

ラスクの商品ページには、店長の言葉で「正規の販売は、店頭とこの通販だけです」と一行書き足しました。転売を止める力はなくても、買う人が選ぶための材料は店から出せます。店長はレビューの欄を眺めて、少しうれしそうにしています。「次は、ラスクを毎日どれだけ焼けばいいかだね」。それを決める材料も、どうやら画面の中にありそうです。

この章のふりかえり

この章で太字にした用語は、暗記カードで覚えられます。

ITパスポートの範囲(43語)を暗記カードで覚える 基本情報まで(65語)を暗記カードで覚える

カードの「カテゴリ」は、この章の節の名前です。同じボタンでもう一度取り込んでも、復習の進み具合は消えません。