本文へ移動
試験

  1. 高校情報
  2. 読んで分かる ITパスポート・基本情報
  3. サービスマネジメント
  4. 第1章 サービスマネジメントの考え方

サービスマネジメント 第1章 マネジメント系・大分類:サービスマネジメント

サービスマネジメントの考え方

利用者にサービスの価値を届け続けるための考え方と、SLAで合意し評価して改善する仕組み。

1-1目的と考え方

春休みの終わり、こむぎ堂に近所のカフェ3軒の店主がそろってやって来ました。来月から、毎朝のパンをこむぎ堂から届けてほしいというのです。注文は予約システムから入れてもらうことにして、話はすぐにまとまりかけました。ところが、いちばん若い店主が手を挙げます。「前の日の何時までに注文すれば、次の朝の何時に届くんですか。予約の画面が止まっていたら、どうすればいいんですか」。店長は笑って「だいたい朝のうちに届けるし、止まったらすぐ直すよ」と答えました。カフェの店主たちは、顔を見合わせたまま黙っています。その夜、ミナトは相棒に打ち込みました。「『だいたい』と『すぐ』を、どう書けば約束になるのかな」

パン屋のカウンタで、カフェの店主と店長が向き合い、アルバイトが「朝7時までにお届け」と書いた約束の紙を差し出している
図:口約束を、紙に書いた約束に変える。カフェの店主と店長のあいだに置かれた1枚の紙

相棒はまず、カフェが買おうとしているものは何かを考えようと言いました。パンそのものなら、店に買いに来れば手に入ります。カフェが欲しいのは「開店前に、頼んだとおりのパンが店に届いている」という状態です。このように、相手が手に入れたい結果を実現する手助けをすることで、相手に価値を届ける手段をサービスと呼びます。配達サービスの価値は、パンの味だけでなく、届く時刻や、予約の画面がいつでも使えることにもかかっています。

その価値を、一度ではなく毎朝届け続けるには段取りが要ります。サービスをどう始め、どう組み立て、どう動かし、どう直していくかを決め、そのために人や機械やお金を割り振って指揮する。こうした組織の能力と手順の集まりをサービスマネジメントといいます。対象のサービスがITを使ったもの、たとえば予約システムによる受付である場合には、ITサービスマネジメントと呼ぶこともあります。

サービスを実際に使うのは誰でしょう。予約の画面に毎晩注文を打ち込むのはカフェの店員で、届いたパンを並べるのも店員です。このように、サービスを使ったり、その恩恵を受けたりする人を利用者といいます。カフェの店主が契約を決めても、使い勝手を毎日確かめているのは利用者の側です。

ここから基本情報!サービスの構成要素と、その出来

配達サービスを分解すると、予約を受ける画面のソフトウェア、それが動くサーバ、配達表を印刷する手順、配達に使う車、焼き上がりの時刻を決めた段取り表、と多くの要素が並びます。このように、ほかの部品と組み合わさって一つのサービスになる構成要素をサービスコンポーネントといいます。機械やソフトウェアだけでなく、手順や文書、ほかの会社から受けているサービスもサービスコンポーネントに含まれます。

どれか一つが欠けると、サービス全体の出来が落ちます。予約が届いて車も走ったのに、配達表の印刷が止まったら、朝のパンは届きません。サービスが利用者や顧客の求めや期待をどの程度満たしているかをサービス品質といいます。届く時刻の正確さ、注文どおりの中身、画面の使いやすさなどが、どれもサービス品質の一部です。

基本情報の範囲ここまで

1-2サービスライフサイクル

配達の初日まで、あと3週間です。店長は「予約の画面にカフェ用のボタンを一つ足せば終わりでしょう」と言います。ミナトが相棒と書き出したやることの一覧は、ボタンの追加の前にも後にも、項目がずらりと並んでいました。

サービスは、思いついた日に始まって終わるものではありません。最初に、どの店に、何を、どの水準で届けるのかを決め、必要な人手や費用を見積もります。この、サービスの方針や求められる中身、計画を定める最初の段階を計画立案といいます。こむぎ堂なら「対象はカフェ3軒、受付は前日の夜まで、配達は朝7時まで」と決めるところです。

決めた中身は、仕組みに落とし込まれます。予約の画面にカフェ用の入り口を作り、配達表を作る処理を組み、運ぶ順路を決めます。できあがった新しいサービスや変更したサービスを、試しの環境から実際に使われる環境へ移し、利用者が使える状態にするまでの一連の活動をサービスの移行といいます。配達の初日の前に、カフェの店員に画面の使い方を伝え、試しの注文を何回か流してみるのも、移行の一部です。

移行が済んでからが、毎朝の本番です。そして本番で見つかった不便を直して次の月に生かすところまでで、ひと回りします。ミナトの一覧の項目が多かったのは、ボタンの追加がこの流れのうちの一つの作業でしかないからでした。

ここから基本情報!5つの段階の名前

サービスが経る段階の全体をサービスライフサイクルといい、計画立案・設計・移行・提供・改善の5つの段階に分けて考えます。順に一度通って終わりではなく、改善で見つけたことが次の計画立案に戻ってくる輪の形をしています。

計画立案で決めた求めを満たすように、サービスの仕組みを具体的に決める段階が設計です。予約の締め切り時刻をどこで判定するか、配達表に何を載せるかを、この段階で決めます。移行を経て、利用者に対して実際にサービスを動かし届ける段階が提供です。毎朝の配達と、予約の画面を動かし続けることがこれにあたります。

計画立案、設計、移行、提供、改善の5つの段階が輪になり、改善から計画立案へ矢印が戻っている。各段階にこむぎ堂の配達サービスでの作業が添えてある
図:配達サービスが一周するサービスライフサイクル。改善で分かったことが、次の計画立案に戻る

基本情報の範囲ここまで

1-3サービスマネジメントシステムとITIL

ミナトの一覧を見た店長は、腕を組みました。「これ、全部うちで一から考えるの? 世の中の会社は、どうやってるんだろう」。相棒の答えは、「一から考えなくていい。お手本がある」でした。

お手本の一つ目は、サービスマネジメントを行うための決まりごとと仕組みそのものです。方針を決め、計画を立て、実行し、結果を確かめて直す。その活動を組織として回すための仕組みをサービスマネジメントシステム(SMS)と呼びます。

仕組みを作る前に、サービスが何を満たさなければならないのかを並べておく必要があります。カフェが求めること(朝7時までに届く)、店員が求めること(スマートフォンからでも注文できる)、こむぎ堂自身が守らなければならないこと(予約客の情報を外に出さない)。このように、顧客や利用者、そしてサービスを提供する組織が、サービスに対して求めることや守る必要があることをサービスの要求事項といいます。

お手本の二つ目は、サービスマネジメントのうまいやり方を集めて整理した手引きです。もとは1980年代にイギリス政府の機関(CCTA)がまとめた書籍群で、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)といいます。規格のように「こうしなければならない」を定めるのではなく、「こうするとうまくいくことが多い」という実践のまとまりで、サービスマネジメントの事実上の標準として世界で使われています。版を重ねていて、ITIL 4 の後に、さらに新しい版(Version 5)も出ています。

ここから基本情報!サービスの当事者と、規格

サービスの要求事項を決めるときに出てくる当事者には、決まった呼び名があります。サービスを受け取る側の個人や組織を顧客といいます。配達サービスなら、こむぎ堂と取り決めを結ぶカフェの店主が顧客で、注文を打ち込む店員が利用者です。サービスを管理して顧客に届ける側の組織、またはその一部をサービス提供者といいます。こむぎ堂はサービス提供者です。

サービスマネジメントシステムに求められることは、日本産業規格のJIS Q 20000 の規格群に定められています。国際規格 ISO/IEC 20000 シリーズを日本語にしたもので、そのうち第1部の JIS Q 20000-1 が、サービスマネジメントシステムの要求事項を定めています。ITIL が「やり方の手引き」なのに対して、JIS Q 20000 は「満たしているかを外から審査できる要求事項」で、組織はこの規格に沿っているかの認証を受けることができます。

ITIL は版によって中身の分け方が変わってきました。以前の版(ITIL v2)は、日々の運用を支える分野と、中長期にサービスを届ける分野の二つに大きく分かれていました。前者をサービスサポートといい、サービスデスクと、インシデント管理・問題管理・構成管理・変更管理・リリース管理を含みます。後者をサービスデリバリといい、サービスレベル管理・キャパシティ管理・可用性管理・ITサービス継続性管理・ITサービスの財務管理を含みます。どちらもシラバスの用語例には無い、古い版の区分の名前です。

基本情報の範囲ここまで

1-4計画と支援

配達を始める前の週、店長が風邪で2日休みました。その2日、ミナトは予約の締め切りを何時にしたのかを思い出せず、カフェからの電話に答えられませんでした。決めたことは、店長の頭の中にしかなかったのです。

サービスマネジメントシステムのもとにあるのは、もっと一般的な考え方です。組織が方針と目標を決め、それを達成するための手順を定めて、互いに関係づけたもののまとまりをマネジメントシステムといいます。品質、環境、情報セキュリティなど、守りたいものごとに合わせてさまざまなマネジメントシステムがあり、サービスマネジメントシステムはその一つです。

マネジメントシステムは、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)を繰り返して回します。この繰り返しをPDCAサイクルと呼びます。配達サービスなら、締め切りの時刻を決め(P)、その時刻で1か月受け付け(D)、締め切りに間に合わなかった注文の数を数え(C)、時刻や知らせ方を見直す(A)、という流れです。

計画を実行に移すには、手を動かす人と設備が要ります。サービスを提供するために必要な人員・設備・資金・情報などをまとめて資源といいます。配達用の車が1台しかなければ、カフェを4軒に増やす計画は資源の面から見直すことになります。

資源の中でも、店長の風邪で足りなくなったのは情報でした。サービスを動かし続けるのに要る、経験から得たやり方や判断の材料を知識といいます。締め切りの時刻や、遅れそうなときの連絡先といった知識は、特定の人の頭の中に置いたままにせず、組織として決めて残し、必要な人が使えるようにしておきます。カフェの店主と、締め切りの変更をいつ、どの手段で知らせるかを決めておくコミュニケーションの取り決めも、ここで計画します。

ここから基本情報!マネジメントシステム規格に共通する考え方

マネジメントシステムの規格には、共通の型があります。そのうち、品質マネジメントシステムの要求事項を定めた日本産業規格がJIS Q 9001 で、国際規格 ISO 9001 を日本語にしたものです。JIS Q 20000-1 も同じ型で書かれているので、章立てや語の使い方がよく似ています。

これらの規格の基本にあるのが、仕事を、入力を受け取って出力に変える一続きの手順(プロセス)の組み合わせとして捉え、プロセスどうしのつながりごと管理する考え方で、プロセスアプローチといいます。カフェの注文(入力)が配達表(出力)に変わり、配達表が次の「配達する」プロセスの入力になる、という見方です。

規格は、人について二つのことを求めています。一つは、知識と技能を使って、意図した結果を出せる能力で、これを力量といいます。配達表の作り方を知っているだけでなく、実際に正しく作れることを指します。もう一つは認識で、働く人が、組織の方針や目標、自分の仕事がサービスにどう役立っているか、決まりを守らないと何が起きるかを分かっている状態をいいます。配達の担当者が「7時を過ぎるとカフェの開店に間に合わない」と分かっていることが、認識の例です。

店長の頭の中にあった締め切りの時刻のように、組織が管理し、保っておく必要がある情報と、それを記した媒体を、規格では文書化した情報と呼びます。手順書のような「これからの決まり」と、作業の記録のような「やった証拠」の両方を含みます。紙でも、予約システムの中のデータでもかまいません。

基本情報の範囲ここまで

1-5SLA(サービスレベル合意書)

配達の3日前、ミナトは約束を1枚の紙に書いてカフェへ持って行きました。いちばん若い店主は紙を読み、「この『止まりにくい』って、どのくらいですか」と指で一行を押さえました。ミナトはその場で答えられず、紙を持ち帰りました。

ミナトが書いた紙は、サービス提供者と顧客のあいだの合意文書にあたります。どのサービスを、どの水準で提供するかを特定して、提供者と顧客が合意した文書をSLA(Service Level Agreement、サービスレベル合意書)といいます。サービスレベル契約と呼ばれることもありますが、シラバスの呼び名はサービスレベル合意書です。

「止まりにくい」が答えられなかったのは、何を測るのかが決まっていなかったからです。SLAでは、まず測るものを決めます。サービスの水準を表すために実際に測る値をSLI(Service Level Indicator、サービスレベル指標)といいます。そのSLIについて、達成を目指す水準をSLO(Service Level Objective、サービスレベル目標)といいます。

こむぎ堂の紙は、次のように書き直されました。

配達サービスのSLA(書き直した版)
項目SLI(測る値)SLO(目標)
予約の画面受付時間中に画面が使えた時間の割合月99%以上
画面の速さ注文ボタンを押してから確認の画面が出るまでの時間3秒以内
配達朝7時までに届いた回数の割合月95%以上

表の2行目にある、処理を求めてから最初の応答が返ってくるまでの時間を応答時間といいます。利用者が「遅い」と感じるかどうかに、大きく関わる値です。

1行目の「受付時間」も、合意しておく必要があります。予約の画面は毎日6時から21時まで受け付けると決めました。このように、サービスを提供すると合意した時間をサービス時間といいます。夜中にサーバの点検をして画面が止まっていても、サービス時間の外なら約束は破っていません。サービス時間の中で、使えるはずのときに実際に使えた度合いがサービス可用性で、1行目のSLIはそれを測っています。

実際に計算してみます。4月は30日なので、サービス時間は1日15時間×30日=450時間です。4月に画面が止まったのは、合わせて3時間でした。使えた時間は447時間で、447÷450≒0.993、つまり99.3%です。SLOの99%を上回っているので、1行目は約束を守れたことになります。止まった時間が4時間30分(450時間の1%)を超えていたら、守れなかったことになります。

ここから基本情報!SLOの代表と、測る対象

代表的なSLOには、サービス可用性、応答時間、サービス時間のほかに信頼性があります。信頼性は、サービスが決められた期間、求められたとおりに止まらずに動き続けられる度合いで、たとえば故障と故障のあいだの平均の時間(MTBF)で表します。可用性が「使えた時間の割合」なのに対し、信頼性は「どれだけ続けて止まらずにいられたか」を見ます。3時間の停止が1回だったのか、10分の停止が18回だったのかで、可用性は同じでも信頼性は大きく違います。

SLAで合意し、測る対象は、個々のサービスの出来だけではありません。そのサービスを支えるサービスマネジメントシステムが、決めたとおりに働いているかも測ります。この二つをまとめてサービス及びサービスマネジメントシステムのパフォーマンスと呼びます。配達の到着率がサービスの側の値なら、「月に一度の振り返りを予定どおり開いたか」はサービスマネジメントシステムの側の値です。

基本情報の範囲ここまで

約束の紙からグラフへ矢印が伸び、グラフには99%の目標の横線と、日ごとに測った可用性の折れ線が描かれている。紙にSLA、横線にSLO、折れ線にSLIの札が付いている
図:SLA(約束の紙)、SLO(目標の線)、SLI(測った値)の関係

1-6パフォーマンス評価と報告

配達を始めて2週間。ミナトは毎朝、配達から戻った車の時刻を記録していました。数字はたまっていくのに、それをカフェに見せたことは一度もありません。ある朝、カフェの店主から「最近ちょっと遅くない?」とだけ言われました。

記録した到着時刻や停止時間のように、測ることのできる結果をパフォーマンスといいます。パフォーマンスは測っただけでは役に立たず、SLOと比べて、守れたかどうかを判断して初めて意味を持ちます。決めたことが実際に行われ、ねらった結果がどの程度出たかの度合いを有効性と呼び、パフォーマンスの評価は、サービスが求められたことに照らして有効だったかを確かめる作業です。

そして、評価の結果は相手に伝えて初めて共有されます。SLAの達成状況などサービスの実績を、合意した頻度と形式で顧客や関係者に伝えることをサービスの報告といいます。こむぎ堂は、毎月はじめに前の月の到着率と停止時間を1枚にまとめ、3軒に渡すことにしました。「最近ちょっと遅くない?」に、数字で答えられるようにするためです。

ここから基本情報!見直す間隔と、数字の流れの読み方

評価の対象は、配達という結果だけではありません。注文の受付、配達表の作成、配達といった手順のそれぞれが、決めたとおりに動き、ねらった結果を出しているかも見ます。提供したサービスと、その実現に関わるプロセスの実行の結果をまとめてサービス及びプロセスのパフォーマンスと呼ぶことがあります。シラバスの用語例には無い言い方です。

評価は、気づいたときにするものではなく、あらかじめ決めた間隔で行います。サービスの提供状況や目標の達成度を、月に一度などの決まった周期で見直す活動を定期レビューといいます。

月ごとの数字を並べると、1か月だけでは見えないものが見えてきます。インシデントの件数や到着時刻などを時間の流れに沿って並べ、増えているのか減っているのか、決まった曜日に偏っていないかといった変化のようすを示した情報を傾向情報といいます。その情報を得るために、過去の実績の変化のしかたを調べ、この先の値を見通す分析を傾向分析といいます。ミナトが2週間の記録を並べ直すと、遅れは雨の日ではなく、注文が多い金曜に集まっていました。「最近遅い」の正体は、金曜の積み込みの時間でした。

基本情報の範囲ここまで

1-7運用評価の視点と指標

月はじめの報告を作ろうとしたミナトは、手が止まりました。到着率と停止時間のほかにも、画面が使いにくいという声、配達表の数字が一度だけ合わなかったこと、サーバの容量の残りなど、書けそうなことはいくつもあります。どれを、どんな物差しで測ればよいのでしょう。

システムがうまく動いているかは、一つの数字では測れません。速さ、止まりにくさ、使いやすさ、データの正しさ、守りの固さと、見る向きによって別の物差しが要ります。どの向きから測るかを先に決めておくと、報告に載せる数字を選びやすくなります。

ここから基本情報!システムの運用を評価する7つの物差し

システムの運用を評価する物差しには、よく使われる分け方があります。どれもいまのシラバスの用語例には無い語ですが、評価の項目を考えるときの手がかりになります。

運用評価の視点と、こむぎ堂での例
視点・指標何を測るかこむぎ堂の例
機能性評価指標求められた機能を提供できているか締め切り後の注文を正しく断れているか
信頼性評価指標壊れにくさと直しやすさ故障の間隔の平均(MTBF)、直すのにかかった時間の平均(MTTR)
使用性評価指標利用者にとっての使いやすさ、覚えやすさ初めての店員が、説明なしで注文を終えられたか
データ保全性障害のときにもデータが壊れたり失われたりしないか停止の後も、注文の件数が配達表と合っているか
安全性とセキュリティに関する指標不正なアクセスや災害への備えができているか管理画面へのログイン失敗の件数
資源の利用状況に関する指標CPUやディスクなどの使われ方サーバのディスク使用率

表に無い視点が一つ残っています。応答時間や、決まった時間に処理できる件数(スループット)など、システムの処理の速さや効率のよさを表す視点を性能といいます。そして、性能を具体的な数値で表すために測る項目を性能指標といいます。「注文ボタンを押してから確認の画面が出るまでの秒数」は、こむぎ堂の性能指標です。

使用性という名前は、ソフトウェアの品質特性を定めた JIS X 25010 から来ています。この規格は2025年に改正され、使用性は「インタラクション容易性」という名前に置き換わりました。シラバスの用語例には改正前の名前が残っているので、両方の名前を知っておくと迷いません。

基本情報の範囲ここまで

物差しが多ければ、それだけよい報告になるわけではありません。カフェの店主が知りたいのは、朝のパンが届くかどうかです。ミナトは、カフェ向けの報告には到着率と停止時間、画面の速さの3つだけを載せ、ほかの数字はこむぎ堂の中で見ることにしました。

1-8改善

4月の報告ができあがりました。予約の画面は99.3%で目標を守れました。配達は90回のうち84回が7時までに届き、93.3%で、95%の目標に届きませんでした。遅れた6回のうち5回は金曜でした。

目標に届かなかったら、直します。直して終わりではなく、測って、比べて、直すことを毎月繰り返し、サービスとそれを支える仕組みを少しずつよくしていくことを継続的改善といいます。PDCAの最後のAを、一度きりにしないということです。

ここから基本情報!約束を守れなかったときの手順と、差の測り方

決められた要求事項を満たしていない状態を不適合といいます。配達のSLOを下回った4月は、不適合が起きた月です。不適合が起きたら、まず起きたことに対処し(遅れた朝はカフェに電話で知らせる)、そのうえで原因を取り除き、同じことが起きないようにする処置をとります。この、不適合の原因を取り除いて再発を防ぐ処置を是正処置といいます。遅れた朝に謝るだけでは是正処置になりません。金曜の積み込みを前の晩に済ませるのが、是正処置にあたります。

直す前に、どこまで直せばよいかを数字で押さえておきます。目指す姿と今の姿を比べ、その差を明らかにして、何を直せばよいかをつかむ分析をギャップ分析といいます。4月の配達は、目標の95%に対して93.3%で、差は1.7ポイントです。回数に直すと、90回の95%は85.5回なので、86回届いていれば目標を守れました。84回との差は2回で、金曜の遅れを2回減らせば届く計算になります。

こうした直す内容と、その順番、担当、期限をまとめたものをサービス改善計画といいます。シラバスの用語例には無い語ですが、継続的改善を思いつきの手直しで終わらせず、承認された計画として管理するための文書です。

基本情報の範囲ここまで

改善を続けるには、どこへ向かっているのかを数字で決めておく必要があります。こむぎ堂は、配達サービスの最終的な目標を「年内に契約するカフェを3軒から5軒に増やす」と決めました。このように、最終的な目標を達成できたかを測る指標をKGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)といいます。

目標に近づくために、特にうまくいかなければならないことは何でしょう。相棒と話し合った結果、それは「朝の配達が遅れないこと」でした。カフェは、開店に間に合わない店とは契約を続けません。目標を達成するうえで決め手になる要因をCSF(Critical Success Factors、重要成功要因)といいます。

CSFが本当に守れているかは、毎月の数字で追います。目標に向けた活動がどこまで進んだかを数値で測る指標をKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)といい、こむぎ堂では「7時までの到着率95%以上」がKPIです。KGIが行き先、CSFがそこへ行くための決め手、KPIが決め手を毎月測る計器、という関係になります。

5月はじめ、こむぎ堂の奥の机に、カフェの店主3人とミナトと店長が集まりました。ミナトが4月の報告を配ると、いちばん若い店主は「93.3%」の数字に赤ペンで丸を付けました。金曜の積み込みを前の晩に移すと店長が説明すると、店主はうなずき、こう言いました。「それなら、金曜だけ締め切りを30分早めてもいいですよ。うちも、そのほうが安心なので」

1か月前、店長は「だいたい朝のうちに」と「すぐ直す」で約束を済ませようとしていました。その言葉のままなら、4月の6回の遅れは「だいたい」の中に紛れ、誰も金曜に気づかなかったはずです。約束を紙に書き、測るものと目標を決め、毎月その差を見せたから、カフェの側から締め切りを早める案が出てきました。ミナトは5月のSLAの「金曜」の行に、20時30分と書き足しました。

ただ、店長には気になることが残っています。「サンドイッチもやってほしいって、2軒から言われているんだけど。それに、クリスマスの予約、去年の3倍くらい来そうなんだよね」。いまのサーバと配達の車1台で、どこまで引き受けられるのか。ミナトはまだ、その答えを持っていませんでした。

この章のふりかえり

この章で太字にした用語は、暗記カードで覚えられます。

ITパスポートの範囲(22語)を暗記カードで覚える 基本情報まで(53語)を暗記カードで覚える

カードの「カテゴリ」は、この章の節の名前です。同じボタンでもう一度取り込んでも、復習の進み具合は消えません。