2-1色の表現
新作の「いちごのデニッシュ」のチラシが、印刷屋さんから100枚届きました。パソコンの画面で作ったときは、いちごの赤がつやつやと光って見えていたのに、紙のいちごはどこか茶色がかっています。同じ日に届いた店先ののぼりも、刷られたロゴのふちがギザギザでした。店長はチラシを画面の横にかざして、何度も見比べます。「同じデータを送ったんだよね。パソコンの色と紙の色は、別物なのかな」。ミナトにも答えは分かりません。相棒に聞くと、返ってきたのは問いでした。「画面は光っているけど、紙は光っているかな」
画面と紙の違いは、色の作り方そのものにあります。ディスプレイは、画素の一つ一つが自分で光を出しています。そこで使うのが赤・緑・青の3色の光で、これを光の3原色(光の三原色)、頭文字をとってRGBと呼びます。3色の光の強さを変えて組み合わせると、ほとんどの色が作れます。
光を重ねると、目に届く光の量は増えます。赤と緑を重ねると黄、緑と青なら水色、青と赤なら赤紫になり、3色をすべて最大の強さで重ねると白になります。このように、混ぜるほど明るくなる色の作り方を加法混色といいます。何も光らせなければ黒です。画面の電源を切ると黒く見えるのは、そのためです。
ここから基本情報!光の3原色の一つ一つ
基本情報のシラバスは、光の3原色を英語の名前で並べています。Red(赤)は、人の目に見える光(可視光)のうち波長がいちばん長い側の色です。Blue(青)は反対に、波長がいちばん短い側の色です。その間にあるGreen(緑)は、人の目が明るさをもっとも強く感じる色で、同じ強さの光でも、緑はほかの2色より明るく見えます。
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紙はそうはいきません。紙は自分では光らず、店の照明の光を受けて、その一部を跳ね返しています。インクは、受けた光のうち特定の色を吸い取る働きをします。紙の色づくりで使うのは、水色に近いシアン、赤紫に近いマゼンタ、黄色のイエローの3色です。これを色の3原色と呼び、頭文字をとってCMYと書きます。
ここから基本情報!インクが吸い取る色
色の3原色の3色は、それぞれ光の3原色の1色を吸い取ります。Cyan(シアン)は赤の光を吸い取り、緑と青を跳ね返すので水色に見えます。Magenta(マゼンタ)は緑の光を吸い取り、Yellow(イエロー)は青の光を吸い取ります。吸い取る色と見える色は、たがいに補色の関係です。シアンは赤の補色、マゼンタは緑の補色、イエローは青の補色にあたります。
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インクを重ねるほど、吸い取られる光が増え、跳ね返る光は減ります。シアンとイエローを重ねると緑、マゼンタとイエローなら赤になり、3色を重ねると黒に近づきます。混ぜるほど暗くなるこの作り方を減法混色といいます。画面は加法混色、紙は減法混色。チラシのいちごは、作った場所と刷った場所とで、別の仕組みの色になっていたわけです。
ただし、実際のインクで3色を重ねても、真っ黒にはなりません。濁った濃い茶色のような色になり、黒1色で刷る場合の3倍の量のインクを重ねることになります。そこで印刷では、黒のインクを別に用意し、4色で刷るのがふつうです。黒をKの文字で表し、この4色の方式をCMYKと呼びます。チラシの文字のような細い黒は、K一色で刷ると、くっきり出ます。
では、いちごの赤がくすんだ理由は何だったのでしょうか。画面の光で出せる色の範囲と、インクで刷れる色の範囲は一致しません。画面の鮮やかな赤のうち、インクでは出せない部分は、刷れる範囲の中のいちばん近い色に置き換えられます。初めからCMYKでチラシを作っていれば、画面の上でも刷り上がりに近い色で確かめられました。
くすみを言葉で説明するには、色を三つの物差しで見ると便利です。赤・黄・青のような色合いの違いが色相、色の明るさの度合いが明度、色の鮮やかさの度合いが彩度です。この三つを色の三要素(色の三属性)といいます。紙のいちごは、色相は同じ赤のままで、彩度が下がっていました。明度も少し下がり、茶色がかって見えていたのです。
ここから基本情報!明るさの差
チラシの見出しを、薄い黄色の地に白い文字で刷ったら、どうなるでしょう。文字の色も地の色も明るいので、文字はほとんど読めません。画像や映像の中で、いちばん明るい部分といちばん暗い部分の差の大きさをコントラストといいます。差が大きいほど「コントラストが高い」といい、文字は読みやすく、写真はくっきり見えます。差が小さいと、全体がぼんやりした眠い印象になります。
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2-2画像の品質
のぼりのギザギザの原因を探すと、ロゴのファイルが見つかりました。通販ページのすみに載せるために作った、縦横300×300の小さな画像です。ミナトはこれを、横60cmののぼりいっぱいに引き伸ばして入稿していました。「画面ではきれいだったんだけどな」
写真やロゴの画像は、細かな色の点が縦横に並んでできています。その点の一つ一つ、つまりデジタル画像を作る最小の単位を画素(ピクセル)といいます。300×300の画像なら、9万個の画素の色が記録されているわけです。拡大すると、画素は四角い色のタイルとして見えてきます。
画素がどれだけ細かく並んでいるかを表すのが解像度です。同じ大きさに表示するなら、画素が多いほど解像度が高く、きめ細かい画像になります。一方、画素の一つ一つが何段階の明るさや色を表せるかを階調といいます。赤・緑・青をそれぞれ256段階(8ビット)で表すと、組み合わせは256×256×256=16,777,216通りで、約1,677万色になります。階調が少ないと、夕焼けの空のようななめらかな移り変わりが、縞模様のように段になって見えます。
解像度を数字で表すときは、1インチ(2.54cm)の長さにいくつ並ぶかで数えます。画面や画像データで、1インチあたりの画素の数を表す単位がppi(pixels per inch)です。プリンタやスキャナで、1インチあたりに打つ(読み取る)点(ドット)の数を表す単位がdpi(dot per inch)です。
のぼりのロゴで計算してみます。横60cmは60÷2.54で約23.6インチです。そこに300画素を引き伸ばすと、300÷23.6で約12.7ppi。画素1個が、横幅およそ2mmの四角になります。チラシでよく目安にされる300ppiと比べると、20分の1以下の細かさしかありません。ふちのギザギザは、この大きな四角の角だったのです。
| 単位 | 数えるもの | 主に使う場面 |
|---|---|---|
| ppi | 1インチあたりの画素の数 | ディスプレイ、画像データ |
| dpi | 1インチあたりのドットの数 | プリンタ、スキャナ |
2-3グラフィックスソフトウェア
ロゴを最初に描いたのは、商店街の文具店の人でした。電話で聞くと「元のファイルなら、線で描いたのがあるよ」と送ってくれました。ミナトがそのファイルを開いて画面いっぱいに拡大しても、ふちはなめらかなままです。同じロゴなのに、何が違うのでしょう。
絵や図を作ったり、写真を直したりするためのソフトウェアをまとめてグラフィックスソフトウェアといいます。シラバスは、その代表として、絵の記録のしかたが異なる二つの系統を挙げています。
一つめは、画像を画素の集まり(ラスター形式)として扱うペイント系ソフトウェアです。筆で塗るように、画素の色を一つずつ変えていきます。写真のように、色が細かく複雑に変わる画像に向いています。撮った写真の明るさや色合いを補正したり、写り込んだものを消したりするフォトレタッチソフトは、ペイント系の代表です。
二つめは、図形を点の座標と線の式(ベクター形式)で記録するドロー系ソフトウェアです。「この点からこの点まで、この太さの曲線を引く」という形で記録するので、拡大しても計算し直して描くだけで、線は荒れません。ロゴや図面、地図のように、はっきりした線と面でできた絵に向いています。文具店の人がくれたのは、ドロー系で作った元のファイルでした。
| 種類 | 絵の記録のしかた | 拡大したとき | 向いているもの |
|---|---|---|---|
| ペイント系 | 画素の色の並び(ラスター形式) | 画素が四角く見え、ふちがギザギザになる | 写真、筆で塗った絵 |
| ドロー系 | 点の座標と線の式(ベクター形式) | 描き直されるので、なめらかなまま | ロゴ、図面、地図 |
のぼりで見えたギザギザには名前があります。画素で表した画像では、斜めの線や曲線が細かな階段の形になり、輪郭がギザギザに見えます。これをジャギーといいます。画素が粗いほど、また拡大するほど目立ちます。
ここから基本情報!ギザギザを目立たなくする
ジャギーを目立たなくする処理をアンチエイリアシングといいます。黒い線と白い地の境目にある画素を、黒と白の中間の灰色で塗り、段差をぼかします。少し離れて見ると、灰色の画素が段差を埋めて、線がなめらかに見えます。文字の表示や3次元CGの描画で広く使われています。
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グラフィックスソフトウェアには、すぐに使える絵の素材が付いていることもあります。文書やチラシに貼り込んで使えるよう、あらかじめ用意された挿絵の素材をクリップアートといいます。パンや麦の穂のイラストを一から描かなくても、素材を選んで配置すれば済みます。使うときは、素材ごとに決められた利用の条件を確かめます。
ここから基本情報!チラシを組み立てる操作
チラシを作り直すとき、ミナトは写真、ロゴ、文字を別々の層に分けて置きました。画像を透明なフィルムを重ねるように何枚もの層に分け、それぞれを独立して編集できる仕組みをレイヤーといいます。文字の層だけを動かしても、下の写真は崩れません。
写真は、いちごのデニッシュが大きく写るよう、まわりの作業台を切り落としました。画像の不要な部分を切り取り、必要な範囲だけを残す操作をトリミングといいます。
重なった層の色をどう見せるかも選べます。上の層を半分透かして下の層と混ぜる、のように、2つの画像の色を割合を決めて混ぜ合わせる処理をブレンディングと呼びます。透明度(アルファ値)を重みにして混ぜるアルファブレンディングがよく知られています。上の層の不透明度を30%にすれば、表示される色は上の色が3割、下の色が7割の割合で混ざります。
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2-4マルチメディアの使い道
チラシが刷り直しに回った週、商店街の会合で秋のイベントの話が出ました。各店が「新しい見せ方」を一つずつ持ち寄る決まりです。店長は帰ってくるなり言いました。「パンを3Dで、くるくる回して見せられないかな」。ミナトは、それがどれほど大変なことなのか見当がつきません。
店長の頭にあったのは、テレビや映画でよく見る、コンピュータで作った映像です。コンピュータを使って作ったり加工したりした画像や映像、またその技術をCG(コンピュータグラフィックス)といいます。写真をもとにせず、形や色を数値で組み立てて絵にするのが特徴です。
CGの使い道は、娯楽だけではありません。商店街の工務店は、パン屋の陳列棚を新しくする図面をコンピュータで引いています。図面や設計図をコンピュータで作り、寸法の計算や修正をしやすくする仕組みをCADといいます。紙の図面と違い、棚の幅を5cm変えれば関係する寸法がまとめて直り、完成した姿を立体で見ることもできます。
現実の装置や出来事を、コンピュータの中で模擬的に再現する仕組みはシミュレーターと呼ばれます。運転や飛行機の操縦の練習に使うものがよく知られています。実物では危険だったり費用がかさんだりすることも、何度でも試せます。
映像と音、操作への反応を組み合わせた娯楽の代表がゲームです。とくにテレビなどの画面につないで、コントローラで操作して遊ぶものをテレビゲームと呼びます。プレイヤーの操作に応じて、その場で映像と音を作り出すので、マルチメディア技術がまとめて使われています。
ここから基本情報!映像を届ける・作る仕組み
イベントの宣伝には、動画も使えそうです。利用者が見たい映像を選び、好きなときに再生できる配信サービスをビデオオンデマンド(VOD)といいます。番組表に合わせて見るテレビと違い、配信の開始を決めるのは見る側の要求です。一方、決まった時刻に番組をインターネットで流し、同じ時間に大勢が見る形はインターネット放送と呼ばれます。
店長がパンをこねる様子を撮った動画は、パソコンで編集できます。映像をデジタルデータとして記録しておき、どの場面にもすぐ飛んで、切り貼りや並べ替えを好きな順番で行える仕組みをノンリニア画像編集システムといいます。テープに記録した映像は頭から順にたどるしかなく、編集はテープからテープへ順にダビングする作業でした(リニア編集)。ノンリニアの「リニア」は、この「一直線に順に」を指しています。
CGの人物を、人間のように自然に動かす方法もあります。人の体に目印やセンサを付け、その動きをカメラやセンサで計測してデジタルデータとして記録する技術をモーションキャプチャといいます。記録した動きをCGの人物に当てはめると、ゲームや映画のキャラクタが、演じた人と同じしぐさで動きます。
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2-53次元CGの描き方
ミナトは無料の3次元CGのソフトウェアを入れて、クロワッサンを作ってみることにしました。画面に出てきたのは、灰色の角ばった塊です。相棒に聞くと「まず形、次に表面、最後に光。順番に足していこう」と返ってきました。
3次元CGの形は、小さな平らな面をつなぎ合わせて作ります。この、立体の表面を作る多角形の面をポリゴンといい、ほとんどは三角形か四角形です。クロワッサンの丸みも、三角形を細かく並べて近づけています。三角形が少ないと角ばった塊に見え、増やすほどなめらかになりますが、そのぶん計算の量も増えます。
ポリゴンで組んだだけの形は、まだ画面の絵ではありません。どこから見るのか、光はどこから当たるのか、表面はどんな手ざわりなのかを決め、そこから画面に映る1枚の画像を計算して作ります。ゲームのように動く3次元CGでは、この計算を1秒間に何十回も繰り返しています。
ここから基本情報!3次元の形が画像になるまで
3次元のモデルのデータから、視点・光源・材質などの情報をもとに、最終的な2次元の画像を作り出す処理をレンダリングといいます。レンダリングの中では、いくつかの処理が順に行われます。
まず、見えない部分を描く対象から外します。カメラの視野の外にある図形を取り除く処理がクリッピングです。作業台の奥にある別のパンが画面の外なら、その形は計算しません。
視野の中でも、手前のものに隠れて見えない部分があります。クロワッサンの裏側の面は、表側の面に隠れています。線だけで形を表すワイヤフレームの表示で、隠れて見えないはずの線を消す処理が隠線消去、面で表した表示で、隠れて見えない面を消す処理が隠面消去です。画素ごとに奥行き(視点からの距離)を記録し、より手前のものの色を残すZバッファ法が、隠面消去の代表的な方法です。
次に、光源の当たり方に応じて表面に明るさの濃淡を付け、立体感を出します。この処理をシェーディングといいます。光に向いた面は明るく、光に背を向けた面は暗く塗ります。いまのコンピュータでは、この計算をGPU(画像処理用のプロセッサ)が受け持ちます。GPUの中で、画面の画素ごとに色や質感を計算する機能をピクセルシェーダといいます。ポリゴンの頂点の位置を計算するバーテックスシェーダと組になって働きます。
表面の作り込みには、形を増やさずに済ませる技法があります。物体の表面に、模様や質感を表す画像(テクスチャ)を貼り付ける技法がテクスチャマッピングです。焼き色の写真を貼れば、ポリゴンの数はそのままで、こんがりした表面に見えます。表面の小さな凹凸を、形は変えずに陰影の計算だけで表す技法がバンプマッピングです。面の向き(法線)を画素ごとに少しずつずらして明暗を付けるので、表面がざらついて見えます。
写真のような仕上がりを求めるときは、光の通り道をたどります。視点から画面の画素ごとに仮想の光線を出し、物体に当たって反射・屈折する道筋を逆向きに追いかけて、その画素の色を決める方法がレイトレーシングです。つやのある表面の映り込みや、ガラスを通した光まで表せますが、計算の量は多くなります。
基本情報の範囲ここまで
出来上がったクロワッサンは、まだ止まったままです。店長の「くるくる回す」をかなえるには、少しずつ向きを変えた絵を何枚も続けて見せる必要があります。
ここから基本情報!CGを動かす
1秒に30枚の絵が要るとしても、全部を手で作るわけではありません。動きの要所になる姿勢だけを指定し、その間の動きをソフトウェアに自動で補ってもらう技法をキーフレーム法といいます。0秒で正面、2秒で真横、4秒で背面、と三つの向きを決めておけば、間の118枚はソフトウェアが作ります。動きを計測して取り込むモーションキャプチャとは、動きの作り方が違います。
形そのものを変える見せ方もあります。ある画像や形から別の画像や形へ、間の画像を作りながらなめらかに変えて見せる技法をモーフィングといいます。丸めた生地が、焼き上がったクロワッサンへ少しずつ姿を変える、という見せ方ができます。
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2-6XRと立体の映像・音
回るクロワッサンをノートパソコンで見せると、店長は少し考えてから言いました。「画面の中で回るのもいいけど、テーブルの上に置いてあるように見せられたら、子どもは喜ぶだろうね」。ミナトはスマートフォンを取り出し、カメラを作業台に向けました。
コンピュータが作った世界と現実との重ね方には、いくつかの段階があります。ゴーグル型の機器などで目の前をすべて覆い、コンピュータが作った仮想の空間の中にいるように体験させる技術がVR(仮想現実)です。首を回せば、見える景色も同じように回ります。
現実の景色はそのまま見せて、そこに文字やCGを重ねて表示する技術がAR(拡張現実)です。スマートフォンのカメラで作業台を映し、その映像の上にクロワッサンの3次元CGを置けば、テーブルにパンがあるように見えます。店長の思いつきは、ARで形にできそうです。
ここから基本情報!現実と仮想を混ぜる技術の呼び名
ARをさらに進め、現実の空間の位置や形をコンピュータが読み取って、仮想の物体を現実の物と同じ空間にあるように置き、手で操作したり、向きを変えて回り込んだりできるようにする技術をMR(Mixed Reality:複合現実)と呼びます。VR・AR・MRのように、現実と仮想を組み合わせる技術をまとめてXR(クロスリアリティ)といいます。
基本情報の範囲ここまで
仮想の空間に大勢が集まる使い方もあります。インターネット上に作られた3次元の仮想空間で、多くの利用者が自分の分身(アバター)として参加し、会話や買い物などの社会的・経済的な活動を行える場をメタバースといいます。商店街の店が仮想の通りに並び、遠くの人がそこを歩いて回る、という使い方も考えられています。
平らな画面に奥行きを感じさせる技術もあります。縦・横に奥行きを加えた三つの方向の情報を持つ表現を3Dと呼び、立体的に見えるように作った映像を3次元映像(3D映像)といいます。人の左右の目は少し離れているので、同じ物でも左右の目には少しずれた像が見えます(両眼視差)。左目用と右目用の映像を別々に見せると、そのずれから脳が奥行きを感じ取ります。
ここから基本情報!光で立体を記録する
左右の目に別々の映像を見せるのとは違うやり方で立体を表す技術もあります。レーザー光の干渉を使って、物体から来る光の様子をそのまま記録し、光を当てて回折させることで、立体的な像を再生する技術、またその像をホログラムといいます。見る角度を変えると、像の見え方も実物と同じように変わります。クレジットカードや紙幣の偽造防止に付いている、角度で色や模様が変わるシールも、ホログラムの技術を使ったものです。
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現実の物そのものを画面にする使い方もあります。建物や物体の形に合わせて映像を映し、実物と映像を組み合わせた立体的な見せ方を作る技術をプロジェクションマッピングといいます。商店街のアーケードの柱に、麦の穂が伸びていく映像を映す、といった使い方です。
ここから基本情報!音の立体感
映像だけでなく、音にも立体感を出せます。前後左右を囲むようにスピーカを何台も並べなくても、2台のスピーカやヘッドホンで、音が後ろや横から聞こえるように感じさせる音響技術をバーチャルサラウンドといいます。音が耳に届くまでに頭や耳の形で変わる様子を、信号処理で音に付け加えて、多方向から聞こえる音の場を疑似的に作ります。
基本情報の範囲ここまで
イベントの日、刷り直したチラシは、いちごの赤が、画面で確かめたとおりの色で出ていました。初めからCMYKで作り、刷り上がりの色を画面で確かめておいたからです。のぼりのロゴも、文具店の人の元のファイルから書き出し直して、ふちはくっきりしています。店の前のテーブルでは、子どもたちがスマートフォンをかざし、そこに浮かぶクロワッサンのまわりを回り込んでは、裏側をのぞいていました。
店長が別物かと聞いた画面の色と紙の色は、光を足す色と、光を引く色でした。のぼりのギザギザは、画素の粗さと、絵の記録のしかたの違いから来ていました。テーブルの上のクロワッサンは、ポリゴンで形を組み、表面と光を計算して、カメラの映像に重ねたものです。どれも、画面と現実の間で、見え方を数値として扱った結果でした。
片づけのあと、店長はスマートフォンを返しながら言います。「このパン、通販のページでも回して見せられないかな。でも、そんなに重たいデータを載せたら、またページが開かなくなるよね」。どこまで軽くできるのか、ミナトはまだ確かめていません。