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中分類20 大分類:経営戦略 ストラテジ系

技術戦略マネジメント

新しい技術が研究室から市場に出て利益を生むまでには、いくつもの壁があります。どの技術に投資し、外の力をどう借り、いつ何を実現するかを決める考え方を学びます。

研究・開発・事業化・産業化の4段階を時間の流れに沿って並べ、その間にある魔の川・死の谷・ダーウィンの海と、上に重なる技術ロードマップの矢印を描いた図
図:研究から産業化までの段階と3つの壁

要点

技術開発戦略の立案

技術開発戦略の目的と考え方
技術を事業の成果に結び付ける経営がMOT(技術経営)。外の技術や知恵を取り込むのがオープンイノベーション。
優良企業が今の顧客向けの改良を続けるうちに、新しい技術の新興企業に市場を奪われる。これがイノベーションのジレンマ。
最小限の製品を早く出し、反応を見て直すリーンスタートアップ。新興企業に出資するVC、事業会社が作るCVC。
価値創出の三要素
技術や製品の価値を作る価値創造、顧客に届ける価値実現、利益として回収する価値利益化。
研究→開発の壁が魔の川、開発→事業化の壁が死の谷、事業化→産業化の壁がダーウィンの海。
新しもの好きの利用者から多数派へ広がる手前にある大きな溝がキャズム。
技術開発戦略の立案
中核となるコア技術を見極め、足りない技術は共同研究・委託研究・技術提携・産学官連携で補う。
外から技術を得る技術獲得、自社の技術を他社に使わせる技術供与。自社技術を標準に広める標準化戦略。
実現できるかを試すのがPoC、事業として価値があるかを試すのがPoV。短期間で試作を競うハッカソン。

技術開発計画

技術開発計画
経営戦略と技術開発戦略に沿って、投資・拠点・人材の計画を立て、経営資源を最適に配分する。
設計・試作・生産準備を同時に並行して進め、期間を縮めるのがコンカレントエンジニアリング。
量産の前に少量を作って問題を洗い出すパイロット生産。成果を守る知的財産権管理も計画に入れる。
技術開発のロードマップ
技術がいつ何をできるようになるかを、根拠と関係者の合意をもとに時間軸に描くのが技術ロードマップ。
その技術をいつどの製品に使うかの製品応用ロードマップ、いつ特許を取るかの特許取得ロードマップもある。

さわって確かめる

研究から産業化までの壁、技術戦略の用語、ロードマップの種類を、次の3つで試します。

1. 魔の川・死の谷・ダーウィンの海に仕分ける

6つの場面が、研究から産業化までのどの壁で止まっているかを選ぼう。

  • 魔の川
  • 死の谷
  • ダーウィンの海
  1. 大学の研究室で新しい素材を見つけたが、どんな製品に使えるか決まらない
  2. 試作品はできたが、量産の設備に投資する資金が集まらない
  3. 発売した製品が、後から参入した大手との価格競争で利益を出せない
  4. 研究所の成果を、事業部が「売れる見込みがない」と開発テーマに採らない
  5. 製品の開発は終わったが、生産と販売の体制を整える人もお金も足りない
  6. 売り出した製品に似た商品が次々に出て、多くの会社が撤退していく

2. 用語と説明を結ぶ

8つの説明それぞれに合う用語を選び、答え合わせをしよう。

  • MOT
  • オープンイノベーション
  • リーンスタートアップ
  • キャズム
  • コンカレントエンジニアリング
  • ハッカソン
  • CVC
  • 技術供与
  1. 必要最小限の製品を素早く出し、利用者の反応を見て作り直すことを繰り返す
  2. 自社の特許やノウハウを、使用料を受け取って他社に使わせる
  3. 技術を経営の中心に置き、研究開発の成果を事業の利益に結び付ける
  4. 設計・試作・生産準備を同時に並行して進め、開発期間を縮める
  5. 大学や他社など外部の技術・アイデアを取り入れて、新しい製品を生み出す
  6. 新しい製品が、新しもの好きの利用者から多数派へ広がる手前にある大きな溝
  7. 事業会社が自社の資金で、新興企業に投資するための組織
  8. 集まった人たちが短期間にチームで試作品を作り、出来を競うイベント

3. ロードマップの3種類に分ける

蓄電池の会社が立てた6つの計画を、技術・製品応用・特許取得のロードマップに分けよう。

  • 技術ロードマップ
  • 製品応用ロードマップ
  • 特許取得ロードマップ
  1. 2028年までに、電池の容量を今の1.5倍にする
  2. 2029年に、新しい電池を家庭用の蓄電池に載せて発売する
  3. 2027年までに、電極の新しい構造について特許を出願する
  4. 2030年までに、充電にかかる時間を30分以内に縮める
  5. 2031年に、同じ電池を電動自転車にも使う
  6. 2029年までに、主な輸出先の国でも特許を取る

3問チェック

最初に選んだ答えで採点します。全問正解で、この単元に「済み」の印が付きます。

  1. 開発した試作品を製品として売り出したいが、量産の設備や販売の体制に回す資金が集まらず、事業にできない。この壁を何と呼ぶか。

    1. 魔の川
    2. 死の谷
    3. ダーウィンの海
    4. キャズム
    答えと解説

    正解はイ。開発から事業化へ進む間の壁が死の谷。魔の川は研究の成果を開発につなげる手前の壁、ダーウィンの海は事業化した後に市場の競争で生き残る壁。キャズムは、製品が初期の利用者から多数派へ広がる手前の溝で、資金の壁を指す言葉ではない。

  2. 新しい技術を使った仕組みが本当に実現できるかを、本格的に開発する前に小さく試作して確かめることを何と呼ぶか。

    1. PoC
    2. PoV
    3. MOT
    4. コンカレントエンジニアリング
    答えと解説

    正解はア。PoC(概念実証)は「技術的にできるか」を確かめる。PoV(価値実証)は「事業として価値があるか」を確かめる。MOT は技術を経営に生かす考え方、コンカレントエンジニアリングは工程を並行して進めて期間を縮める方法。

  3. 業界の大手が、今の顧客の要望に応えて製品の性能を上げ続けていたところ、性能は低いが安くて手軽な新しい技術の製品に、市場を奪われた。この現象を表す用語はどれか。

    1. オープンイノベーション
    2. リーンスタートアップ
    3. イノベーションのジレンマ
    4. キャズム
    答えと解説

    正解はウ。優良企業が正しい判断として既存顧客向けの改良を続けた結果、新しい技術への対応が遅れて負けるのがイノベーションのジレンマ。オープンイノベーションは外の技術を取り込む方法、リーンスタートアップは小さく作って試す進め方、キャズムは普及の途中の溝。