　日本には、草木や鉱物、生き物の名を借りた色の名前が数多くある。藍（あい）、茜（あかね）、萌黄（もえぎ）、鳶色（とびいろ）。どれも、その色を作るもとになった材料や、身のまわりで見かけた色あいから名づけられたものである。
　色の名は、ただの記号ではない。「浅葱（あさぎ）」と聞けば、うすい葱の葉の色が浮かぶ。名前が、色の記憶を運んでいる。
　いま私たちが画面の上で扱う色は、数値で表される。それでも、名前を知っていると、選ぶ色の理由を言葉にできる。伝統色を覚えることは、色を語る言葉を増やすことでもある。
